刀剣。
武器、道具、器具として文明を築き、時には国家の命運まで左右してきた来たと言う意味で、人類にとって最重要アイテムの一つだが、中にはアイデンティティや権力の象徴、美術品、神器に位置づけられる物も存在する。
人類の精神性に与えた影響も大きく、気づかないうちに刀剣類(日本刀、太刀、槍、矛/鉾、剣、その他)や刃物の鍛造(たんぞう)に由来する単語や慣用表現を使っている事があるのでまとめてみたい。
【 例文】
- <単刀直入>になりますけど、受験生達が<しのぎを削り>ながら<切羽詰まった><鍔迫り合い>をしている中、<付け焼き刃>的な勉強では<土壇場>で彼らに到底<太刀打ち>出来ません。
- <真剣>に<鍛え直す>気がないなら<切り捨て>ますよ。
【ア行】
- 相槌を打つ(あいづちをうつ):鍛冶屋が二人一組でリズム良く槌を打つ様子
- 雨が降ろうが槍が降ろうが(あめがふろうが、やりがふろうが)
- 痛手(いたで):刀や槍(または矢など)による重傷
- <用例>痛手を被る。痛手となる。
- 一刀両断(いっとうりょうだん)
- 一本槍(いっぽんやり)
- 芋剣先/芋剣秘(菓子):芋けんぴの漢字表記の一例
- *その他、芋乾干、芋堅干、芋健肥、芋犬皮など表記の種類が多い
- おっとり刀/押っ取り刀(おっとりがたな)
- <用例>押っ取り刀で駆けつける
- 折紙付き(おりがみつき)
【カ行】
- 快刀乱麻/を断つ(かいとうらんま/をたつ)
- 返り討ち(かえりうち)
- 返す刀で(かえすかたなで)
- 刀狩り(かたながり):農民や僧侶から刀剣をはじめとする武器を放棄させる政策で、豊臣秀吉が行った『刀狩令』が最も有名。
- かまぼこ/蒲鉾
- *現在主流の物は『板かまぼこ』で、本来の形に近いのは串の先に魚のすり身を巻き付けて焼いた『笹かまぼこ』や『竹輪かまぼこ』
- 干戈を交える(かんかをまじえる):戦争の言い換え。武器を用いない対立にも派生している。
- *干=たて、戈=ほこ
- 鍛える/鍛え直す(きたえる/きたえなおす)
- 切っ先(きっさき)
- <用例>喉元に切っ先を突きつける
- 急先鋒(きゅうせんぽう):社会運動や政治活動などにおける急進的な活動をする人あるいはその立場
- 極めつき/極めつけ(きわめつき/きわめつけ)
- 切り返す(きりかえす)
- 切り口上(きりこうじょう)
- 切り込む(きりこむ)
- <用例>切込み隊長。事件の実態に鋭く切り込んだ取材。
- 切り捨てる(きりすてる)
- 切り抜ける(きりぬける)
- キレ(がある/良い/鋭い)
- 切れ味(きれあじ)
- きんつば/金鍔:和菓子
- 剣襟(けんえり):ピークドラペルと呼ばれる襟のスタイルで、主に男性用ダブルジャケットに使われる。
- 剣が峰に立つ/立たされる(けんがみにねにたつ/たたされる)
- ケンサキイカ/剣先烏賊
- 剣山(けんざん):華道用具
- けん玉/ケンダマ/剣玉
- 剣呑(けんのん)
- 剣幕(けんまく)
- 小細工/小刀細工(こざいく/こがたなざいく)
【サ行】
- 刺し違える
- 鞘当て(さやあて) *歌舞伎用語
- 秋刀魚(さんま/サンマ)
- しのぎを削る/鎬を削る(しのぎをけずる)
- 自腹を切る(じばらを切る)
- 次鋒(じほう) :武道の団体戦において、2番目に出場する選手
- 鯱鉾/シャチホコ
- <派生>しゃちほこ張る
- 斜に構える(しゃにかまえる)
- 手刀(しゅとう):チョップとほぼ同義
- 正真正銘(しょうしんしょうめい)
- 真打ち(しんうち)
- 真剣(しんけん)
- 真剣勝負(しんけんしょうぶ)
- 助太刀(すけだち)
- ズバズバ/ずばずば
- ズバリ/ずばり
- <派生>ズバッと、すっぱり、すぱっと
- 舌鋒(ぜっぽう)
- <用例>舌鋒鋭く/舌鋒が鋭い
- 先鋒(せんぽう):軍隊の戦闘を行く部隊
- <派生>武道の団体戦で最初に出場(対戦)する選手。
- 反りが合う/合わない(そりがあう/あわない)
- 切羽詰まる(せっぱつまる)
【タ行】
- 大上段に構える(だいじょうだんにかまえる)
- 叩き上げ(たたきあげ):鍛造作業の事
- <派生>学歴やコネを持たない人が、自分の力で出世する事、あるいはその人自身。
- *諸説あり
- たたき台/敲き台/叩き台(たたき台:金属を鍛造する際に乗せる台。
- <派生>これからアイデアを練って行くための土台となる大まかな計画
- 太刀魚(たちうお)
- 太刀打ち出来ない(たちうちできない)
- 太刀持ち(たちもち)
- 断ち切る
- <用例>迷いを断ち切る。未練を断ち切る
- 単刀直入(たんとうちょくにゅう)
- 鍛錬(たんれん)
- 地が出る/地金が出る(じがでる/じがねがでる)
- 丁々発止(ちょうちょうはっし)
- 付け焼き刃(つけやきば)
- 鍔迫り合い(つばぜりあい)
- 手刀を切る(てがたなをきる):立ち止まる事が出来ない場面などでお辞儀の代りに行う動作。大相撲で懸賞金を受け取る前の動作。
- 伝家の宝刀(でんかのほうとう)
- 刀削麺(とうしょうめん/ダオシャオミエン)
- 研ぎ澄ます
- <用例>神経を研ぎ澄ます
- 鉄は熱いうちに打て(てつはあついうちにうて)
- ドスが利く/ドスを利かせる:短い刀→脅す道具→おどす→ドス
- <用例>ドスが利いた声。
- とんちんかん/トンチンカン/頓珍漢:刀鍛冶の槌音。3人がタイミングをずらしながら槌を振り下ろすリズムを音で表したもの。
【ナ行】
- 薙ぎ倒す(なぎたおす):薙刀/薙刀(なぎなた)で敵の足元を掬うように攻撃すること
- 鉈豆/ナタマメ:鞘の長さが最長60㎝にまで達する豆類。福神漬けの材料のひとつ。
- <別名>刀豆(トウズ、タチマメ)、帯刀(タテハキ)
- 童話『ジャックと豆の木』の豆はこれだと言う説が有力
- 二刀流(にとうりゅう)
- 二本差し(にほんざし):打刀(うちがたな)と脇差(わきざし)を身に付ける資格を持つ人、すなわち武士の異称
- 刃傷沙汰(にんじょうざた)
- 抜き打ち(ぬきうち)
- <用例>抜き打ちテスト)
- 抜き差しならない(ぬきさしならない) *諸説有り
- なで斬り(なで切り)
- なまくら/鈍:刃物の切れ味が悪いことで、働きが悪い人間の意に派生した
- 刃傷沙汰(にんじょうざた)
- 矛を収める(ほこをおさめる):攻撃や争いを休止する事
【ハ行】
- 火花を散らす(ひばなをちらす)
- 深手(ふかで):刀や槍(または矢など)による深い傷
- <用例>深手を負う
- 懐刀(ふところがたな/かいとう)
- ペンは剣よりも強し(ぺんはけんよりもつよし)
- 矛先/鉾先(ほこさき)
- <用例>怒りの矛先を向ける、攻撃の鉾先を向けられる
【マ行】
- ○○正宗(まさむね)
- 鎌倉時代の刀工の名、またはその人が作った刀剣 ⇒ 切れ味が良い ⇒ 日本酒の銘柄
- 丸腰(まるごし):刀を腰に付けていない状態 ➡ 武器を携帯していない状態 ➡ 対策や対抗手段が用意出来ていないまま物事に臨む状態
- 身から出た錆(みからでたさび)
- 銘打つ(めいうつ)
- *陶芸由来など諸説あり
- 目抜き(めぬき)
- <用例>目抜き通り
- 元の鞘に収まる(もとのさやにおさまる)
- 諸刃の剣(もろはのつるぎ/けん)
【ヤ行】
- 刃を研ぐ(やいばをとぐ):反撃や対抗を狙って密かに準備を整えること
- 刃を向ける(やいばをむける):反抗や敵対の姿勢を示す事
- 焼きが回る(やきがまわる):加齢により頭や体の働きが鈍り、以前は当たり前に出来ていた事が出来なくなる状態
- 矢尽き刀折れる(やつきかたなおれる)
- ヤリイカ/槍烏賊
- 槍玉に挙げる/挙げられる(やりだまにあげる/あげられる)
- 横槍を入れる/入れられる(よこやりおいれる/いれられる)
【ラ行】
- 両刀使い(りょうとうづかい)
【未確認】
- 裏切る? 鈍る(にぶる、なまる)?、チャンバラ?、とどめを刺す?
【派生表現】
- 裏切る/裏切られる
- 自腹を切る(じばらをきる)
- 詰腹を切らされる(つめばらをきらされる)
- 土壇場(どたんば):処刑場の首を打ち落とす場所
- 腹を割って○○する(はらをわって○○する)
- 不意打ち
【西洋の刀/剣】
- ソードフィッシュ(sword fish):直訳は剣魚。日本語ではメカジキ。
- 諸刃の剣(もろはのつるぎ)
- *『剣=けん』と読んでも間違いではない
【武器以外の刃物】
- 大鉈を振るう(おおなたをふるう)
- カマイタチ/鎌鼬:妖怪の名
- カマキリ/鎌切
- 蟷螂が斧/蟷螂の斧(とうろうがおの/とうろうのおの):カマキリの前足の言い換え
- ナタマメ/鉈豆:大型の豆で、主に福神漬けの材料として栽培されている
- メスを入れる:手術を行う事。転じて組織や社会の問題点を改善すること。
【まとめ】
- このテーマをまとめ始めると、当初の予想より多くの表現があることが分かった。
- つまり、刀を所有したり帯刀を許されることが、古代からいかに高いステータスであったかと言うことが想像される。
また、当たり前だが、取り扱いに危険が伴う道具だけに、<真剣>な場面や事柄に関連する例が多い。
2025/4/6改訂(34回目)
2020/08/22 初出
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