囲碁と将棋。
世界中に数多(あまた)存在するボードゲームの中で、『偶然性の介入する余地が最も少ない』あるいは『勝敗にプレイヤーの実力(差)が最も直接的に反映される』部類に属している。
関心や関わりのレベルについては、『囲碁と将棋の区別がつかない人』から『プロのタイトル獲得者』まで幅広いが、その用語や由来表現の一部は日常会話にまで浸透しており、気付かないうちに使っている事もあるので、まとめてみたい。
ア行)
- 悪手(あくしゅ)
- あの手この手
- *諸説あり(要継続検証)
- いい加減(いいかげん)
- *囲碁では肯定的な意味(資源配分のバランスが良く無駄がない状態)
- 一番手(いちばんて):その局面における候補手の中で最も順位が高いもの
- *二番手、三番手と続く
- *諸説あり
- 一目置く/置かれる(いちもくおく/おかれる)
- 一手(いって):碁石を1つ置く事。あるいは将棋の駒を1つ動かすか持ち駒を1つ使う事。
- <用例>次の一手、別の一手、渾身の一手
*諸説あり
- 打つ手がない(うつてがない)
- 上手(うわて)
- <用例>一枚も二枚も上手
- 王手(おうて)
- <用例>王手をかける/かけられる、逆王手
- 傍目八目(おかめはちもく):観戦者の方が局面を客観的に捉えて先が的確に読めること
- お手柔らか(おてやわらか)
- *武道由来説あり
カ行)
- 勝ち目がない(かちめがない)
- *サイコロ賭博由来説もあり
- 活路(かつろ)
- <用例>活路を開く、活路を見いだす
- *諸説(仏教、戦)あり
- 決め手(きめて)
- 局面(きょくめん)
- 禁じ手(きんじて) *相撲と共通
- 玄人(くろうと)⇔素人(しろうと):(囲碁が日本に伝来したばかりの頃は)実力上位者が黒石(後手で不利になる)を使っていた事から。
- *現在は逆で黒石(黒番)が先手
- *仏教由来説など諸説あり
- 結局(けっきょく)
- 後手後手(ごてごて)
- 後手に回る(ごてにまわる)
- 碁石金(ごいしかね/きん):戦国武将、武田信玄が買収や褒賞に使った軍用貨幣
- 碁石小灰蝶/ゴイシシジミ:シジミチョウ科の蝶
- 碁石蛤/ゴイシハマグリ:チョウセンハマグリの別名で、碁石(白石)の材料として用いられる事に由来
- 碁石豆/ゴイシマメ:ガンクイマメの別名
- 碁盤の儀(ごばんのぎ):七五三の儀式
- *本来は五歳男子向けだが、対象は広くなっている
- *正式には十九路盤でなく、二十路の日置盤と呼ばれる物が使われるようだ
- 碁盤の目(ごばんのめ)
- <用例>碁盤の目の様な町並み
- 碁盤割(ごばんわり):土地を垂直に交わる道路で均等に区画する事
- 駒が揃う(こまがそろう)
- *『駒』自体の原義は『子馬』
- 駒不足(こまぶそく)
- 駒を進める/コマを進める
サ行)
- 指し手(さして)
- <用例>鮮やかな指し手、差し手を誤る
- 下手(したて)
- <用例>下手に出る
- 終局(しゅうきょく)
- <用例>終局に差し掛かる、終局を迎える
- 収束(しゅうそく) *諸説あり
- 将棋倒し(しょうぎだおし)
- 上手(じょうず):江戸時代における囲碁七段の別称
- 初手(しょて)
- 序盤/中盤/終盤(じょばん/ちゅうばん/しゅうばん)
- 素人(しろうと)⇔玄人(くろうと):(囲碁が日本に伝来したばかりの頃は)実力下位者が白石(先手で有利になる)を使っていた事から。
- *現在は逆で白石(白番)が後手
- *仏教由来説など諸説あり
- 定石/定跡(じょうせき)
- <用例>定石通りに、○○するのが定石だ
- 白黒つける(しろくろつける)
- 捨て石(すていし)
- 捨て駒(すてごま)
- 先手(せんて)
- <用例>先手を打つ、先手を取る、先手必勝
- 死活(しかつ)
- <用例>死活問題
- 筋(すじ)
- <用例>筋道、筋が良い、筋違い
タ行)
- 大局(たいきょく)
- <用例>大局観、大局的
- 打開(だかい)
- *語源には諸説あるが、将棋用語として一般化した事は確実。
- <用例>新しい局面、局面を打開する、苦しい局面
- 高飛車(たかびしゃ):他人を見下す横柄な人や態度
- <派生>タカビー(ほぼ死語)
- 駄目(だめ):駄目詰まりより。
- <派生>ダメ(禁止、注意、諦め)、駄目押し、ダメ出し、ダメダメ
- 段違い(だんちがい)
- *諸説(柔道、剣道、弓道)あるが、段位の始まりは江戸時代前半期の碁だと言われている
- 着手/着手する(ちゃくしゅ/ちゃくしゅする)
- *諸説あり?
- 詰め(つめ)
- <用例>詰めが甘い、詰めを誤る、追い詰める
- 詰み/詰んだ/詰んでいる(つみ/つんだ/つんでいる):王(玉)の逃げ道が無い状態になる事。転じて、負けや失敗が確定的になる事。
- 手厚い(てあつい)
- *諸説あり
- 手合い(てあい)
- *相撲語源説あり
- 手合わせ(てあわせ)
- *諸説あり
- 手薄(てうす)
- *諸説あり
- 手加減する(てかげんする)
- 手堅い(てがたい)
- 手駒(てごま):手持ちの駒。転じて、すぐに動ける手下や部下の事。
- 手順(てじゅん)
- 手数(てすう/てかず) *諸説あり
- 手違い(てちがい)
- 手詰まり(てづまり)
- 手抜き/手を抜く(てぬき/てをぬく):囲碁において優劣が明らかな領域に、必要以上の資源(石)を使わないこと
- 手を入れる(てを入れる)
- 手を打つ(てをうつ)
- 手を緩める(手をゆるめる)
- 手を読む(てをよむ)
- 頓死(とんし)
ナ行)
- 投げる(なげる):敗北の表明、『投了(とうりょう)』より
- *実際に駒を投げ出したり、盤をひっくり返す場合もある(らしい)
- 成り上がる/成り上がり(なりあがる/なりあがり)
- 成金(なりきん)
- 難局(なんきょく)
ハ行)
- ハメる/ハメられる:ハメ手より。
- *諸説あるが、囲碁・将棋用語として一般化したと考えられる
- 必至/必死(ひっし)
- 飛車角落ち(ひしゃかくおち):ハンデ戦の条件のひとつ。主力を欠いた状態での戦い(を強いられる事)に派生。
- 布石(ふせき)
- <用例>布石をを打つ、布石を敷く
- ポカ *花札由来説もあり
マ行)
- 待ったをかける(まったをかける) *相撲が先か?
- 目算(もくさん)
- <用例>目算通り、目算が狂う
- 目論む/目論見(もくろむ/もくろみ)
- 名人(めいじん):江戸時代における囲碁九段の別称
- 名人に定跡なし(めいじんにじょうせきなし)
- 持ち駒(もちごま)
ヤ行)
- 八百長(やおちょう):囲碁愛好家で相撲部屋と取引があった「八百屋の長兵衛」の短縮形
- *相撲界特有の用語(隠語)であったが、他の競技全般にまで派生
- 読み(よみ)
- <用例>○○手先まで読む。先を読む。
【屋号】
- 王将(おうしょう):中華料理チェーン
- <例>餃子の王将(京都王将)、大阪王将
【要検証】
- 隅に置けない、手合わせ、手遅れ、手落ち、間に合う/間に合わない?
【プロ野球の中継を将棋・囲碁用語で】
- キングスとブラックスの日本シリーズ。
- <いい加減>に<白黒をつけたい>と<先手を打った>キングスが<中盤>で<王手をかけた>ものの<詰めを誤り>、<持ち駒が豊富>で<大局的>な<布石を敷いて>いたブラックスに<終盤>で<目算を狂わされて>ると形の<局面を迎えて>います。
【まとめ】
- 仏教用語、歌舞伎用語、相撲用語などと並んで、日常会話における浸透度や出現頻度が高い。
- 当然ながら、戦略、手順、状況把握などに関する表現が多い
- 『手』に関する表現が多い
- 最終的には決断により勝敗が決する
2025/1/3改訂(26回目)
2022/3/20 初出
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