日本の国技とされている相撲。
実際のところ競技人口自体は決して多くないし、 全く興味がなかったり嫌いな人も多いと思う。
ただし、 長い歴史の中、相撲用語や相撲起源の慣用表現は日常会話の中にまで浸透しており、気付かないうちに使っていることがあるのでまとめてみたい。
ア行)
- 赤ちゃん土俵入り(あかちゃんどひょういり):幼児の逞しい成長を願う神事兼行事
- <バリエーション>赤ちゃん初土俵入り、赤ちゃん豊年土俵入り
- 揚げ足を取る(あげあしをとる)
- 勇み足(いさみあし)
- 痛み分け(痛み分け):取組中に一方が怪我をした場合、引き分けになる決まりがあった
- 一番(いちばん)
- <派生>大一番(おおいちばん)、ここ一番(ここいちばん)
- いなす
- 受けて立つ(うけてたつ)
- うっちゃる
- 腕相撲(うでずもう)
- 押しが強い(おしがつよい)
- 押し切る ⇔ 押し切られる(おしきる ⇔ おしきられる)
- 押しの一手(おしのいって)
- 押しも押されぬ/押しも押されもしない(おしもおされもせぬ/おしもおされもしない)
- *『押しも押されもせぬ』が本来の表現である模様
- *諸説あり
- 同じ土俵に乗る(おなじどひょうにのる)
カ行)
- ○○界の横綱(○○界のよこづな)
- 肩すかし(を食う、食らう)
- 勝ち越し⇔ 負け越し
- がっぷり四つ(がっぷりよつ)
- ガチンコ/ガチ
- 紙相撲(かみずもう)
- かわいがる/かわいがり
- 変わり身が早い
- 禁じ手(きんじて) *将棋・囲碁と共通
- 金星(を挙げる):平幕力士の横綱戦における勝利の事で、他競技でも『格上の相手に勝つ』と言う意味で転用されている。または美人/美女のこと。
- 首相撲(くびすもう):ムエタイ(タイ式ボクシング)の体勢
- 軍配が上がる(ぐんばいが上がる)
- 腰砕け(こしくだけ)
- ごっちゃん/ごっつあん
- *何をもらっても、おごられても、やってもらっても、全てこの一言で対応出来る万能語だが、声が小さかったり発音が不明瞭で、良く聞き取れないケースも多い。
- <派生>ごっつぁんゴール:サッカーでゴール前のこぼれ球を押し込む形で得点すること
サ行)
- 逆手に取る(さかてにとる)
- *<決まり手例>大逆手(おおさかて)
- *合気道か柔道の方が先か?
- 仕切り直し(しきりなおし)
- 四十八手(しじゅうはって):決まり手の数(の豊富さを)表した言葉で、時代によって認定数には変動がある
- *2021年現在の相撲協会規定では82手
- 死に体(しにたい):倒れたり土俵の外に飛び出す途中で相撲は継続しているが、すでに自力では体制を持ち直す事が出来ない状態。
- <派生>機能不全に陥り崩壊を待つだけの組織の事、特にその状態にある政権。
- 勝負あった/勝負あり
- 序の口(じょのくち)
- 白星/黒星(しろぼし/くろぼし)
- 捨て身/捨て身技 *柔道と共通
- Sumo Citrus(スモウシトラス):米国で栽培・販売されているデコポンの商品名
- *デコポン自体も登録商標で、品種名は不知火(しらぬひ)
- セキトリイワシ:深海魚の一種
- 揃い踏み(そろいぶみ)
タ行)
- タニマチ:力士の後援者やスポンサー。大阪の地名、谷町(たにまち)から
- ちゃんこ料理:『ちゃんこ』は相撲部屋で供される食事全体を指す言葉だが、その中心になるのは鍋料理で、元力士が経営する料理店のメインメニューや屋号として認知度が高まった。
- 突き出し:決まり手の一種。
- <派生>和食店で席に着くと自動的に出される小鉢に入った料理。
- *諸説あり
- 突き放す/突き放し(つきはなす/つきはなし)
- 土がつく(つちがつく)
- てんでんばらばら/てんでバラバラ:相撲興行(など)が終わった際に打ち鳴らされる『跳ね太鼓』の音と『観客がそれぞれの帰路にに散って行く』様子を掛けた表現。
- *諸説あり
- *歌舞伎や寄席(よせ)でも、終演後に跳ね太鼓が打たれる
- 土俵際(どひょうぎわ)
- <用例>土俵際に追い詰められる。土俵際で踏み留まる。
- ドザエモン/土左衛門:水死体の婉曲表現で、体がぶよぶよだった力士のしこ名に由来
ナ行)
- 泣き相撲(なきずもう):子供(主に一歳児)の健やかな成長を願う神事兼行事
- <バリエーション>泣き笑い相撲
- 猫だまし(ねこだまし):奇襲戦法のひとつ
- 残る(のこる):勝敗がまだ決していない事。転じて極めて不利ながら、逆転の可能性が失われていない事。
ハ行)
- 番狂わせ(ばんくるわせ)
- 番付(ばんづけ)
- 【派生】長者番付、芝居番付、ヒット商品番付
- 人の褌で相撲を取る(ひとのふんどしすもうをとる)
- 独り相撲(ひとりずもう)
- *現代(21世紀)でも神事として実際に行われている
- 札止め(ふだどめ) *演劇語源?
- ぶちかます/かます
- 褌を締めてかかる/褌を締め直す(ふんどしをしめてかかる/ふんどしをしめなおす)
- *諸説あり
- 星/勝ち星(ほし/かちぼし):勝つこと、勝利数、時に女性や彼女
マ行)
- 待ったなし
- 待ったをかける*将棋か囲碁が先?
- 物言いがつく/をつける(ものいいがつく/をつける)
- 満員御礼(まんいんおんれい) *演劇語源が先?
- 水入り(みずいり) あるいは 水が入る(みずかはいる):興行が雨で休みになる事。あるいは、長くなった相撲で一旦休憩を入れること。
- 胸を借す/借りる(むねをかす/かりる)
ヤ行)
- 八百長(やおちょう)
- 指相撲(ゆびずもう)
- ヨコヅナイワシ:深海魚の一種
- ヨコヅナクマムシ:海に住む緩歩(かんぽ)動物の一種
- ヨコヅナサシガメ:昆虫の一種
ラ行)
- ロボット相撲(ろぼっとずもう):ITや機械工学を活用したロボット同士を戦わせる競技で、国際大会も行われている
ワ行)
- 脇が甘い(わきがあまい) *“脇を固める”は演劇用語
【会社名やブランド】
- 大関(おおぜき):日本酒の銘柄かつ会社名
- 千代の富士(ちよのふじ):日本酒の銘柄
- 横綱(よこづな):日本酒の銘柄
- 力士(りきし):日本酒の銘柄
【以下は要確認】
- 浮き足立つ、顔合わせ(歌舞伎由来?)、シカト(=シカかます)、取組み(例:真面目に取り組む)、取りこぼし、突っ張る?、割が合う/合わない
【考察】
- 調べていくと思った以上に出て来るが、その中の一部、例えば『八百長』、『番狂わせ』、『肩すかし』などは他の言葉への置き換えようとしても咄嗟には思いつかない程に一般化していると言える。
- 実際、他のスポーツや競技の状況・展開・展望を表す際にも転用され、実況や記事の中でも高頻度で使用されている。
【プロ野球中継を相撲用語で】*<カッコ内>が相撲用語
- プロ野球日本シリーズも第6戦を迎えました。
- セ・パの<両横綱>タイタンズとジャガース、前半戦は2勝2敗と<がっぷり四つの>展開で進んで参りましたが昨日は<八百長>疑惑に揺れた相手リリーフの<独り相撲>に乗じてタイタンズが<白星を拾った>形です。
- 本日の<大一番>、タイタンズに<軍配が上がるのか>のかジャガースが<土俵際>で粘りを見せて<うっちゃる>のか?
- 注目のプレイボールまで<待ったなし>となりました。
- 逆に、相撲中継を他スポーツの用語で行おうとすると次のようになると思うが、これで力士がぶつかり合う情景を頭の中で描けと言うのには無理があるだろう。
【大相撲を野球用語で】*<カッコ内>が野球用語
- 大相撲11月場所も14日目を迎えました。
- <セントラル/パシフィック両リーグの>の<三冠王>北の宿と鷹の爪は終盤まで<ゲーム差無し>での<シーソーゲーム>を繰り広げてまいりましたが、昨日は<黒い霧疑惑>で揺れた鷹の爪がまさかの<ワイルドピッチ>で一敗を喫しました。
- 本日の<日本シリーズ>北の宿が<胴上げ>を決めるのか鷹の爪が<サヨナラ逆転ホームランを放つ>のか注目の<プレイボール>はCMの後!
【まとめ】
- 相撲用語や由来表現は日本人の思考パターンやメンタリティの領域にまで浸透しており、ほぼ完成の域にある運営システムを含めて(①完全総当りでない点と ②本場所の数が過多気味である点は除く)、大相撲が国技を名乗ることに疑問の余地はない。
2024/11/14 改訂(29回目)
2020年5月初出
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