弓矢や弓道。
現代生活において弓矢を根源的な用途(狩猟や戦い)で使用する機会は極めて稀で、弓道人口自体も決して多いとは言えないが、弓矢に由来する慣用表現や弓道用語の一部は日常会話にも浸透しており、気づかないうちに使っている事があるので、まとめてみたい。
ア行)
- 中る(あたる):矢が標的に当たる事 ➡ 中毒になる事 ➡ 特に食中毒に罹ること
- 当たり外れ/中り外れ(あたりはずれ)
- 射すくめる/射竦める
- 痛手(いたで):矢(または刀や槍)による重傷
- <用例>痛手を被る。痛手となる。
- 射止める:到底手が届かないと思っていた(思われていた)対象を自分の物にする事
- 一矢報いる(いっしむくいる)
- 射抜くような/射貫くような(いぬくような)
カ行)
- 下弦の月(かげんのつき)
- 刀折れ矢尽きる(やおれかたなつきる)
- 勝手(かって):弦(つる)を引く方の手で、一般的には右手を指す
- <用例>使い勝手がよい
- キュービッドの矢(キューピッドのや) :人の恋愛感情を操る矢で、金と鉛の2種類あると言われている
- 光陰矢のごとし(こういんやのごとし)
- 嚆矢/嚆矢となる(こうしとなる)
サ行)
- 三本の矢の教え(さんぼんのやのおしえ):毛利元就による『三子教訓状』から
- 射幸心(しゃこうしん)
- 上弦の月(じょうげんのつき)
- 将を射んと欲すれば先ず馬を射よ(しょうをいんとほっすればまずうまをいよ)
- 白羽の矢が立つ(しらはのやがたつ)
- 図星(ずぼし)/図星を突く(ずぼしをつく):図星は弓道用の的(まと)の中心部にある黒丸部分
- 正鵠を得る/射る(せいこくをえる/いる)
タ行)
- ターゲット:狙っているもの。狙い。目標。
- 竹矢来(たけやらい)
- 注目の的(ちゅうもくのまと)
- 的確(てきかく)
- 的中(てきちゅう)
- テキヤ/テキ屋:路上での飲食業や販売業で、人が集まる場所へ常に移動する事が特徴。
*射的屋→的屋(まとや)→的屋(てきや)→テキ屋→テキヤ
- 手ぐすねを引く/手薬煉を引く(ねぐすねをひく)
- 手の内(てのうち)
- <用例>手の内を見せる。手の内を明かす。
- *剣道由来説もあり
- 手筈を整える(てはずをととのえる)
- ドンピシャ/ドンピシャリ:ドン+ピシャ(リ)。的の中心に矢が真っ直ぐ刺さる様子より。
- *諸説あり(検証を継続)
- <ピシャについて>神事である『歩射(ぶしゃ)』の表記揺らぎによるものと推測される
- 歩射 ➡ 奉射、武社 ➡ ビシャ(備射、備社、毘舎) ➡ ピシャ
ナ行)
- 二の矢(にのや):先制攻撃から間を置かずに行われる追加攻撃
- <用例>二の矢を放つ。二の矢三の矢。
- のるかそるか:矢のシャフト部を製作する中間行程において、材料の竹(矢竹)が真っ直ぐ仕上がるか曲がってしまうか予想しにくい事に由来する。従って、本来の漢字表記は『伸るか反るか』だが、『乗るか反るか』の方が主流になっている。
ハ行)
- はず/筈:矢の後部、弦を引っかけるための溝になっている部分
- 引き分け(ひきわけ)
- ピシャ(リ)/ぴしゃ(り) ➡ 『ドンピシャ(リ)』ご参照
- 百発百中(ひゃっぱつひゃくちゅう)
- *本来は百射百中(ひゃくしゃひゃくちゅう)だが、火器の発達により『銃や砲の命中度』へ移行したと思われる
- 標的になる/される(ひょうてきになる/される)
- 深手(ふかで):矢(あるいは刀や槍など)による深い傷
- <用例>深手を負う
マ行)
- 的(まと)
- <用例>憧れの的。注目の的。非難の的。
- 的鯛/マトダイ:正式名称はマトウダイ
- <由来>丸っこいシルエットと中心部の黒い斑点より
- 的外れ(まとはずれ)
- 的を射た(まとをいた)
- 的を得た(まとをえた)
- *「的を射た」の誤用とされるが、そうとも言い切れない
- 的を絞る(まとをしぼる)
- 満を持す(まんをじす) *史記(李将軍列伝)から転用
- 命中(めいちゅう):矢が狙った物に当たることで、銃弾、ミサイル、パンチ、キック等の攻撃手段にも対象範囲が拡大した。
- 目星をつける(めぼしをつける)
- 目的(もくてき)
ヤ行)
- 矢(や):大きな石を割るのに使われる楔(くさび)
- 矢穴(やあな):大きな石を割るための楔(くさび)を打ち込むガイドとして穿(うが)つ穴
- 矢面に立つ(やおもてにたつ)
- 矢絣(やがすり)
- 櫓(やぐら)
- *もともと『矢倉』や『矢蔵』と表記されていた。*諸説あり
- 矢車(やぐるま):鯉のぼりのポール先端に付けられる回転式の飾り
- 矢車草/ヤグルマソウ
- 矢先(やさき)
- <用例>外出した矢先。連絡しようとした矢先。
- 矢印(やじるし)
- 矢継ぎ早(やつぎばや)
- 矢でも鉄砲でも持ってこい(やでもてっぽうでももってこい)
- 矢の催促(やのさいそく)
- 矢のような送球(やのようなそうきゅう)
- やばい/ヤバい/矢場い:『矢場(やば)』と言われる射的場が、風紀の良くない場所だった」からとする説が有力
- *『ゲームセンター=不健全』と言うイメージと似ているかも
- 矢文(やぶみ):矢に括り付けるか収納して、直接持って行けない場所へ飛ばす手紙や文書。次々と届く催促の意にも派生している。
- 矢も楯もたまらず(やもたてもたまらず)
- 弓と弦(ゆみとつる):近道と遠回りの違い
- 弓なり(ゆみなり)
- 弓引く/弓を引く(ゆみひく/ゆみをひく):(特に恩義のある者に対して)歯向かう、反抗する、背く事
- 弓矢固め(ゆみやがため):プロレス技の一つ。英語では『bow and arrow』。
ラ行)
- レインボー:英語のrainbowの音写で、直訳は『雨弓』、意訳は『雨上がりの弓』
【要検証】
- 足踏み(あしぶみ):矢を放つ姿勢を決めるため、一番最初に行う動作
- 成り:弓全体のフォルムから???
- <用例>身なり
- にべもない:鰾弓(ニベ弓)に使われる鰾/鰾膠(にべ)から???
【固有名詞】
- サンフレッチェ広島:プロサッカー球団
- 【構成】3+イタリア語で矢の複数形(フレッチェ/frecce)
- 【由来】毛利元就による「三本の矢」の教え
- 東レ アローズ:バレーボール球団(強豪かつ老舗)
- 三ツ矢サイダー:炭酸飲料
- 矢場とん(やばとん):みそカツ店の屋号/社名
- ヤバネスポーツ:2018年まで存続していたスポーツ用品の卸会社
- <保有していたブランド>矢羽根印、YABANE
- レッドアロー号:西武鉄道の特急列車。直訳は『赤い矢』
【お守り/縁起物/魔除け】
- 破魔矢(はまや)
- 破魔弓(はまゆみ) *通常は矢とセットになっている
【舞/パフォーマンス】
- 弓取式(ゆみとりしき)
【当て字】
- 矢鱈(やたら)
- 矢張(やはり)
- 矢庭に(やにわに)
- 無理矢理(むりやり)
【まとめ】
- 当初予想したよりもかなり数が多い
- *歌舞伎用語や相撲用語よりも多い!
- 元来、対象の生命を奪うための道具であると同時に、射る側の命運や人生なども左右するので、基本的にシリアスな言葉や表現が多い。
- スピードや正確さに関する表現も多い
- 『弓』と『矢』は人名にも用いられ、特に『弓』はしなやかさと強さを持ち合わせている事から、女性の名前『ゆみ』の漢字として当てられる事も多い。
2025/1/3 最新更新(26回目)
2022/03/19 初出
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