軍事技術や軍用品。
現在(2021年)の日本において、筆者を含む一般人が実戦兵器を間近に見る機会は、基地(自衛隊や米軍)の内部公開日ぐらいだと思うが、軍事技術や軍用品の中には、民生品へ転用される事により家庭やオフィス内にまで浸透している例が意外とあるので、まとめてみたい。
*五十音順
ア行)
- アーミーナイフ:直訳は『軍隊ナイフ』
- <別名>十徳ナイフ
- インスタントコーヒー
- *軍用品として開発された訳ではないが、第一次世界大戦を機に需要が拡大~定着した
- インターネット
- M&Ms チョコレート/エムアンドエムズチョコレート:軍用食
- *高温下でもベタつかないようキャンディコーティングされている
*キャッチフレーズは「口でとろけて、手にとけない」
- 折りたたみ自転車
- *発祥については諸説あるが、軍用として需要が拡大した事は確か
カ行)
- カーキ(色)/カーキー(色):軍服に使われる『土色』の事 ➡ アパレルの世界では迷彩色と言う括りで、濃いグリーンを指す場合もある。
- カーディガン:セーターの改良品。負傷兵でも脱ぎ着しやすいよう前開きにしてボタンを付けたもの。
- 缶詰:軍用携帯食
- *缶切りの方が後から開発されたので、それまでは開けるのが大変だったらしい
- 魚群探知(ソナー):暗礁、氷山、敵の潜水艦などを探知する装置
- 軍手:『軍用手袋』の省略
- 原子力(核分裂):爆弾 ➡ 発電や動力
サ行)
- GPS:自分や自軍のいる位置を把握するため
- サランラップ/Saran Wrap:弾薬や火器の防水・防湿材 ➡ 食品用ラップ
- *最初に食べ物(レタス)を包んだのが、『サラとアン』と言う女性(主婦)だったことにちなみ、『サランラップ』と言う商品名が誕生した(らしい)。
- 司令塔:元々は、軍艦において司令官が指揮を執るブリッジ(通常、艦上で最も高い構造物)の事。転じて、スポーツの世界で攻撃の起点となるポジション(例:サッカーのミッドフィルダー、アメリカンフットボールのクォーターバック、バレーボールのセッターなど)を指すようになった。
- スプレー缶:殺/防虫剤の携帯と散布をや効率的に行うため
- 正露丸(せいろがん):薬品の商標。元の名称は『征露丸(ロシアを征するの意)』。
- *薬品自体は『クレオソート丸』としてそれ以前から存在していたが、軍用に改良/採用されてから広く普及した。
- 赤外線センサー:敵や攻撃目標を感知・測距するため
- セーラー服:水兵用の服
- *背中の襟が大きいのは、集音器として使っていた名残りと言う説が有力
- 自走式掃除機:地雷除去ロボット
タ行)
- ダッフルコート:起源は北欧の漁師が使っていた防寒着だが、イギリス海軍で採用された事で世界レベルに普及した
- ダイナマイト:爆薬(の商標)
- *開発者(命名者)のアルフレッド・ノーベル自身は『戦争の抑止に役立つ製品(のはず)』と主張していたが、実際には軍用として爆発的に売れた
- *派生語も多い
- 【派生例】ダイナマイト級、ダイナマイト打線、ダイナマイトボディ
- チノパン/チノ・パンツ:軍服(ズボン)
- *『チノ』はスペイン語で『中国人』を意味するChino、または英語で『中国』を表すChinaに由来する事はほぼ確実
- *漁師あるいは港湾職員の作業ズボンが原型のようだが、軍用として需要が拡大した事は確か
- 詰め襟の学生服:軍服
- *風が強く寒い地域の乗馬服が原型か
- ディスクブレーキ:戦闘機用(特に制動距離が短い艦載機用?)
- ティッシュペーパー:ガスマスク用フィルターや脱脂綿の代用品
- *第一次世界大戦の終了後、大量に余った在庫を売りさばいたのが、民生利用の始まりと言われている
- デジタルカメラの画像素子(CCD):軍事衛星用
- トレンチコート:野戦用の軍服
- *直訳すると『塹壕外套』
- ドローン:無人航空機
- *直訳すると『雄蜂』で、軍用ヘリコプターの愛称と同じ系列のネーミング
- 電子レンジ:中核技術であるマイクロ波発信器(マグネトロン)自体はレーダー用に開発された。
- *武器(電子銃)への応用も研究されたが、ごく近距離でないと有効でないため失敗
ハ行)
- 光ファイバー:軍事通信用
- Pコート(ピーコート):イギリス海軍の防寒着
- ホチキス/ホッチキス/ステープラー:機関銃の弾送り機構から
- *諸説あり
マ行)
- マーガリン:軍用食として、バターを安く代替するために開発された
- 迷彩柄(めいさいがら):元々はジャングルにおける野戦で風景に紛れ込みやすいデザイン
ラ行)
- ランドセル:オランダ軍の背嚢『ランセル』➡日本陸軍➡学習院初等科
- 冷凍食品
- レトルト食品
- *缶詰よりも携行(および廃棄の簡便性)に適した軍用食として開発~実用化された
- *日本では『レトルトカレー』として普及した
- ロケット(スカイロケット):ロケット弾として(発達)
- *語源はイタリア語の『糸巻き』➡ ロケット花火 ➡ ロケット弾 ➡ ロケット(スカイロケット)
【番外(軍事用語から一般に転用)】
- 一兵卒(いっぺいそつ):会社や組織で一番低い地位におり、権限を持たない人(あるいはその地位)
- 鬼軍曹(おにぐんそう):新入りや若手を容赦なく鍛える指導員の事
- カモフラージュ/カムフラージュ:周囲の風景に溶け込んで発見されにくくする偽装およびそれに用いられる技術。『迷彩(服)』が代表例。
- 大将(たいしょう):飲食店の男性店主。芸能事務所、相撲部屋、プロレス団体、政党(派閥)等のリーダー格。
- 強行軍(きょうこうぐん):日程に余裕がない出張や旅行
- 予備軍(よびぐん):いざという時に招集される兵力で年齢は正規軍に比べると高め ➡ 注意を怠ると危険な状態に陥る可能性がある人たち
- <用例>○○病予備軍。リストラ予備軍。
【番外(元が軍歌の楽曲)】
- アイルランド国歌(兵士の歌):
- 軍艦マーチ:元歌は『軍艦行進曲 あるいは 軍艦』。歌詞はあるが、演奏曲として使われる事が多いか。
- ズンドコ節:元歌は『海軍小唄(かいぐんこうた)』
- *諸説あるが、他に比べて有力
- 中国国家(義勇軍進行曲):元は抗日戦争(日中戦争)をテーマにした映画の主題歌 ➡ 軍歌 ➡ 国歌
- フランス国歌(ラ・マルセイエーズ):元は革命歌(部隊歌)で、歌詞の内容はかなり過激
- ルーマニア国歌(目覚めよ、ルーマニア人!):元は革命歌で、歌詞の内容はかなり過激
【まとめ】
- 軍の存在意義や戦争の是非はともかく、『民生品の軍事転用(スピンオン)』、『最初から軍事と民生で共用(デュアルリユース)』、『軍事用途で発達した技術』まで含めると、膨大な数になる。
- 基礎研究のレベルでは、用途や応用先が定まっていない(見つからない)事が大半なので、軍用と民生のカテゴリー分けは結果論になるケースが多い。
2024/10/21 改訂(15回目)
2021/8/7 初出
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