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セーラー服とホッチキス
  • ~ 民生品や日用品に転用されている軍事技術や軍用品 ~

 

サランラップのパッケージ

サランラップ(Saran Wrap)のパッケージ / 2023年11月撮影

 

軍事技術や軍用品。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
生活圏に基地があったり、軍事/防衛施設の公開日にでも出向かない限り、現在(2021年)の日本において、筆者を含む一般人が実戦兵器を間近に見る機会は皆無と思われるが、軍事技術や軍用品の中には、民生品へ転用される事により家庭やオフィス内にまで浸透している例が意外とあるので、まとめてみたい。

 
 
 
【五十音順】
 
 

  • ア行)

 

      • アーミーナイフ:直訳は『軍隊ナイフ』
        • <別名>十徳ナイフ

 

      • インターネット:軍用通信網として開発された

 

      • M&Ms チョコレート/エムアンドエムズチョコレート:軍用食
        • *高温下でもベタつかないようキャンディでコーティングされている
          *キャッチフレーズは「口でとろけて、手にとけない」

 

      • MA-1ジャケット(えむえーわんじゃけっと):軍用機の乗務員が着用するフライトジャケットの一種
        • リバーシブル仕様で、救助を待つ際に目立つよう、裏面が『蛍光オレンジ(色)』になっているのが特徴。

 
 
 

  • カ行)

 

      • カーキ(色)/カーキー(色):軍服に使われる『土色』の事 ➡ アパレルの世界では迷彩色と言う括りで、濃いグリーンを指す場合もある。

 

      • カーディガン:セーターの改良品。負傷兵でも脱ぎ着しやすいよう前開きにしてボタンを付けたもの。

 

      • カレーライス(ジャガイモとニンジンが入ったとろみの強いカレー):日本海軍の脚気(かっけ)防止食。
        • *明治時代に海軍で考案されたレシピが残っている。
        • *船舶勤務者が多い海上自衛隊では、現在(2025年)でも『曜日感覚を失わないよう』、毎週金曜日にカレーが出されるらしい。

 

 

      • 缶詰:軍用携帯食
        • *缶切りの方が後から開発されたので、それまでは開けるのが大変だったらしい

  

      • 魚群探知(ソナー):暗礁、氷山、敵の潜水艦などを探知する装置

 

      • 軍手:『軍用手袋』の省略

 

      • 原子力(核分裂):爆弾 ➡ 発電や動力

 
 
 

  • サ行)

 

      • サランラップ/Saran Wrap:弾薬や火器の防水・防湿材 ➡ 食品用ラップ
        • *最初に食べ物(レタス)を包んだのが、『サラとアン』と言う女性(主婦)だったことにちなみ、『サランラップ』と言う商品名が誕生した(らしい)。

 

      • GPS:自分や自軍のいる位置を把握するため

 

      • 司令塔:軍艦において司令官が指揮を執るブリッジ(通常、艦上で最も高い構造物)の事 ➡ スポーツの世界で攻撃の起点となるポジション(例:サッカーのミッドフィルダー、アメリカンフットボールのクォーターバック、バレーボールのセッターなど)を指すようになった。

 

      • スプレー缶:殺/防虫剤の携帯性および散布効率性向上のため

 

      • 赤外線センサー:敵や攻撃目標を感知・測距するため

 

      • セーラー服:水兵用の服
        • *襟が肩に掛かるほど大きいのは、『集音器として使われていた頃の名残り』と言う説が有力

 

      • 自走式掃除機:地雷除去ロボットとして開発された

 
 
 

  • タ行)

 

      • ダイナマイト:爆薬(の商標)
        • 開発者(かつ命名者)のアルフレッド・ノーベル自身は『戦争の抑止に役立つ製品(のはず)』と主張していたが、実際には軍用として爆発的に売れた。➡ ノーベルは『死の商人』と揶揄(やゆ)された。➡ 負のイメージを払拭するためノーベル賞を設立した(らしい)。
        • *派生語も多い
          • <派生語の例>ダイナマイト級、ダイナマイト打線、ダイナマイトボディ、他

 

      • 詰め襟の学生服:軍服
        • *風が強く寒い地域の乗馬服が原型と思われる

 

      • ディスクブレーキ:戦闘機用(特に短い制動距離を必要とする艦載機用?)

 

      • ティッシュペーパー:ガスマスク用フィルターや脱脂綿の代用品
        • *第一次世界大戦の終了後、大量に余った在庫を売りさばいたのが、民生利用の始まりと言われている

 

      • デジタルカメラの画像素子(CCD):軍事衛星用

 

      • トレンチコート:野戦用の軍服
        • *直訳すると『塹壕外套(ざんごうがいとう)』

 

      • ドローン:軍用の無人航空機
        • *直訳すると『雄蜂(おばち/おすばち)』で、軍用ヘリコプターの愛称と同系列のネーミング

 

      • 電子レンジ:中核技術であるマイクロ波発信器(マグネトロン)自体はレーダー用に開発された。
        • *武器(電子銃)への応用も研究されたが、ごく近距離でないと有効でないため失敗

 
 
 

  • ハ行)

 

      • 光ファイバー:軍事通信用

 

      • Pコート(ピーコート):イギリス海軍の防寒着

 

      • ホチキス/ホッチキス/ステープラー:機関銃の弾送り機構から
        • *諸説あり

 
 
 

  • マ行)

 

      • マーガリン:軍用食。バターを安く代替するために開発された。

 

      • 迷彩柄(めいさいがら):元々はジャングルでの野戦において風景に紛れ込みやすいデザインとして考えられた

 
 
 

  • ラ行)

 

      • ランドセル:オランダ軍の背嚢『ランセル』 ➡ 日本陸軍 ➡ 学習院初等科

 

      • 冷凍食品:軍用食

 

      • レトルト食品:軍用食
        • *缶詰よりも携行(および廃棄の簡便性)に適した軍用食として開発~実用化された
        • *日本では『レトルトカレー』として普及した

 

      • ロケット(スカイロケット):ロケット弾として(発達)
        • *語源はイタリア語の『糸巻き』➡ ロケット花火 ➡ ロケット弾  ➡ 宇宙船

 
 
 
【軍用品として実用化や普及が進んだ例】
 

      • インスタントコーヒー
        • *軍用品として研究開発された訳ではないが、第一次世界大戦を機に需要が拡大~定着した

 

      • 折りたたみ自転車
        • *発祥については諸説あるが、軍用として需要が拡大した事は確か

 

      • 正露丸(せいろがん):薬品の商標。元の名称は『征露丸(ロシアを征する丸薬の意)』。
        • *薬品自体は『クレオソート丸』としてそれ以前から存在していたが、軍用に改良/採用されてから広く普及した。

 

      • ダッフルコート:起源は北欧の漁師が使っていた防寒着だが、イギリス海軍に採用された事によって世界レベルで普及した

 

      • チノパン/チノ・パンツ:軍服(ズボン)
        • *『チノ』はスペイン語で『中国人』を意味するChino、または英語で『中国』を表すChinaに由来する事はほぼ確実
        • *漁師あるいは港湾職員の作業ズボンが原型のようだが、軍用として需要が拡大した事は確か

 

      • ボールペン:(万年筆と違い)『飛行中でも書ける筆記具』としてイギリス空軍に採用される事で実用化が進み需要が拡大した
        • *日本にもアメリカ軍経由で流入した

 
 
 
【番外①(軍事用語から一般に転用)】
 

      • 一兵卒(いっぺいそつ):社会組織で一番低い地位におり、権限を持たない人(あるいはその地位)

 

      • 鬼軍曹(おにぐんそう):新入りや若手を厳しく鍛える指導役の事
        • *長期的には指導した者の方が地位的に上になる場合も多い
  •  
      • カモフラージュ/カムフラージュ:周囲の風景に溶け込んで発見されにくくする偽装およびそれに用いられる技術。日本語訳は『迷彩柄/迷彩服』。

 

      • 軍団(ぐんだん):戦闘集団 ➡ 高い専門性を備えた(主に男性で構成される)精鋭チーム

 

      • 大将(たいしょう):飲食店の男性店主。芸能事務所、相撲部屋、プロレス団体、政党(派閥)等のリーダー格。

 

      • 強行軍(きょうこうぐん):ハイペースで体力的に厳しい長距離移動 ➡ スケジュールの詰まった(特に遠隔地への)出張や旅行

 

      • 野球用語いろいろ

 

      • 予備軍(よびぐん):有事の際に招集される兵力で、年齢は正規軍に比べると高め ➡ 油断すると望ましくない状態や境遇に陥る可能性がある集団
        • <用例>○○病予備軍、リストラ予備軍、メタボ予備軍

 
 
 
【番外②(元が軍歌、革命歌、独立戦争関係などの楽曲)】
 

      • アイルランド国歌:『兵士の歌』

 

      • アルジェリア国家:『誓い』

 

      • 軍艦マーチ:元歌は『軍艦行進曲 あるいは 軍艦』。歌詞はあるが、演奏曲として使われる事が多いか。

 

      • ズンドコ節:元歌は『海軍小唄(かいぐんこうた)』
        • *諸説あるが、他に比べて有力

 

      • 中国国歌:『義勇軍進行曲』。【変遷】抗日戦争(日中戦争)をテーマにした映画の主題歌 ➡ 軍歌 ➡ 国歌

 

      • ドイツ(事実上の)国歌:『ドイツ人の歌』。元は革命歌で三番まであった。
        • 社会状況の変化に沿って、現在(2025年)は三番のみが演奏されている

 

      • フランス国歌:『ラ・マルセイエーズ』。革命歌(部隊歌)として生まれ、歌詞の過激度は高め。

 

      • ルーマニア国歌:【題名】『目覚めよ、ルーマニア人!』)。革命歌として誕生したもので、歌詞の内容はかなり過激。

 
 
 
【まとめ】
 

      • 軍の存在意義や戦争の是非はともかく、『民生品の軍事転用(スピンオン)』、『最初から軍事と民生で共用(デュアルリユース)』、『軍事用途で発達した技術』まで含めると、膨大な数になる。

 

      • 画期的な発明や発見も、用途や応用先は後からついてくるケースが大半なので、『軍用と民生のカテゴリー分け』は結果論になる割合が高い。

 

2025/11/15 改訂(20回目)
2021/8/7 初出

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