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1秒=セシウム133原子が91億9263万1770回
振動するのに要する時間です
 

~ 時計の精度向上と各段階における中核技術について ~

 
SEIKO/電波修正クロック

筆者自宅で使用中のSEIKO製電波修正クロックSQ659W

 
【 始めに(おことわり)】
 
    • 本記事は時計の『精度』を主軸として展開しています。
    • また、時計史においては『同等の技術革新が別な国や地域で別々に発生した例』もある為、その時期が必ずしも一致しない場合があります。
 

 
 
 
 

時計。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
文字通り『時を計る』道具であり、天体観察(恐らく太陽と月)から始まったと思われるその進歩は、20世紀の中盤まで精度向上と小型化を通して人類が持つテクノロジーの最先端を切り開き続けて来たので、その歩みについて『精度』を軸にして確認して行きたい。
 
また、技術革新に伴い不要となった機能、機構、形態、用途なども多いが、ギミック化、象徴化、電子化などの形で生き残っている例もあるので、こちらもまとめてみたい。
 
 
【精度向上を軸に】
 
 
  • <年に約28日の誤差(進み)>

 

      • 所有数:人類全体で1個(天体としての月)
      • 形態:天体観測
      • 原理:月の満ち欠けが周期的であること(約28日周期)
      • *現在でも中華圏の行事は陰暦で行われている物が多く、人間のバイオリズムには合っている面もある
 
 
  • <日に数時間~24時間の誤差>
 
 
      • 所有数:人類全体で1個(太陽)
      • 形態:太陽あるいは影を目視
        • *日没時は計測出来ず、天候や季節にも左右される
        • *緯度が高いほど、季節変動が大きい
        • *日時計は、教材、モニュメント、オブジェ等の形で、現在でも一定の需要や存在
      • 原理:太陽の運行が一定速度であること
 
 
  • <日に数時間以内の誤差>
 
      • 所有者:国家
      • 仕組み:流体を一定速度で一定量を落下させる
      • 形態:水運時計
 
  •  
  • <日に1時間以内の誤差> 
 
      • 所有者:国家、都市、権力者
      • 仕組み:錘(おもり)の落下エネルギーを歯車で制御
      • 形態:塔時計

 

        • 時計塔や塔時計は文明度や文化度を示すシンボルとして、都市の主要建築物に多くに設置された。
        •  
        • 【代表例】ビッグ・ベン。
          • 鐘の音:ビッグ・ベンが付属する宮殿名の『ウエストミンスター』として学校のチャイムの定番にもなっている
      • からくり人形 *時間を示す機能はオマケ程度と言うケースもある
  
 
  • <日に10分以内の誤差>
 
      • 所有者:大金持ち
      • 主要技術:ゼンマイ、テンプ
      • 形態
        • 振り子時計(掛け/置き)
        • 錘(おもり)を用いた掛け時計
          • <代表例>鳩時計(1980年代に電子化)
            • *ヨーロッパでは2021年現在でも『カッコー時計』が作られている模様

 

 
  • <日に数分以内の誤差>
 
      • 所有者:船会社、鉄道会社、金持ち、エリート
      • 主要技術:ゼンマイ、テンプ
      • 形態
        • 船舶時計/マリンクロック/クロノメーター:外洋航海の生命線だった
        • 懐中時計(個人で一つ)*小型化が進んだ。腕時計の1つ前の段階。
        • 金時計(きんどけい)/銀時計(ぎんどけい):表彰の賞品として使われ、<エリート>の代名詞でもあった。   
        • 鉄道時計:2021年現在でも販売している
        • 機械式時計(ステータスシンボルとして):精度、価格、耐久性など、ほぼ全ての点でクォーツ時計の方が優れている
  
 
  • <日に1分以内(月に30分以内)の誤差>

 

      • 所有者:一般人の大人、一般人家庭
      • 主な形態:腕時計、置き時計、掛け時計、目覚まし時計、タイマー
      • 主要技術: クオーツ(水晶)に電圧をかけると一定の周波数(約32,000回/秒)で振動する事
 
 
  • <日に10秒以内(月に数分以内)の誤差>

 

      • 所有者:一般人の高校生以上、一般人家庭(複数所有)
      • 主な形態:腕時計、置き時計、掛け時計、目覚まし時計、タイマー
      • 主要技術: クオーツ(水晶)に電圧をかけると一定の周波数(約32,000回/秒)で振動する事
 
 
  • <日に1秒以内(月に30秒以内)の誤差>

 

      • 所有者:一般人の大人(複数所有)、一般人の小学生以上、一般人家庭(各部屋に一台)
      • 主な形態:腕時計、置き時計、掛け時計、目覚まし時計、タイマー
      • 主要技術: クオーツ(水晶)に電圧をかけると一定の周波数(約32,000回/秒)で振動する事
 
      •  実用品としては、この段階で完成(成熟)の域に到達したと言える

 

 
  • <年に10秒以内の誤差>
 
      • 所有可能者:一般人の経済的に余裕がある大人
      • 主な形態:腕時計、掛け時計
      • 原理:クオーツ(水晶)に電圧をかけると一定の周波数で振動(約400万回/秒)する事
 
 
  • <人間の感覚では認識不可能な誤差>
 
      • 主な形態:電波(修正)時計、GPS時計
      • 原理:周期表 I族の原子が一定の周期で振動していること。これを用いた『原子時計』で計測された時間データを電波で発信する。
 
 
【実用性は低減したり消滅しているが、生き残っている機能や部品】
 
      • 錘(おもり):鳩時計の装飾として

 

      • オルゴール音:置き時計や掛け時計用に電子音で再現

 

      • 砂時計・水時計:短時間のタイマーやインテリアとして、現在でも需要がある
        • <例>調理タイマー、紅茶
          • *水時計の流動剤として、実際は油が使われることが多い

 

      • ゼンマイ:機械時計(特に高額腕時計)の動力源としては健在

 

      • ネジ巻きの穴:掛け時計のデザインとして 
        • *振り子とセットでデザインされる事も多い

 

      • 日時計:学校などの教材兼オブジェとして

 

      • 振り子:置き時計や掛け時計の動きのある飾りとして 

 

      • 歯車:からくり時計などで、時計の駆動に関係しないギミックとして

 

      • 針:スマホやスマートウオッチでは、画像表示で代替されている。

 

      • ベル音:目覚まし時計用。電子音で再現したり置き換えられているが、大音量の製品では金属製のベルが現在でも使われる

 

      • ボンボン音:掛け時計の音。もともと金属棒を叩いて発生させていた物を電子音で再現。
 
 
【将来消滅する可能性がある部品】
 
      • 針(時分秒針):『ディスプレイの画像』として表示される例ケースが増えそう
 
      • リュウズ/竜頭:腕時計で電波修正が普及してから、機能上は不要になりかけている
 
 
 
【まとめ】

 

      • コンピューターやデジタル機器が普及するまで、科学技術の最先端を担ってきた分野であり、時計製造の技術が他の産業分野に転用されたり、影響をを与える事も多かった。
        • *集積回路(IC)の応用も早く(1970年代前半)、電卓と並んで民生用の量産化を牽引した

 

      • 小型・軽量化やコストの低下により、個人レベルで複数所有できるようになっても、高級時計を身に付ける事は、現在でもステータスシンボルとしての位置を占めている。
 
      • 時計は、『性能の高さ(精度)と値段が必ずしも比例しない』と言う点で、稀な特徴を持つ工業製品
 
      • 時計自身が(憧れの品として)祭の山車や建築物のギミックとして用いられた例も多い。
 
  
初出 2024/1/4

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