【 始めに(用語の説明)】
- ①軍国主義(ぐんこくしゅぎ、英: militarism, 独: Militarismus)または軍事主義(ぐんじしゅぎ)もしくはミリタリズムとは、外交の手段として戦争を重視し、政治、経済、教育、文化などのあらゆる活動は、軍事力強化のために行わなければならないとする国家体制や思想をいう。Wikipediaより引用
- ②太平洋戦争(たいへいようせんそう):第二次世界大戦の一局面として、1941年12月~1945年8月にわたり米国と日本の間で行われた戦争で、日本側での呼び名は『大東亜戦争』。2023年8月現在、『戦前、戦中、戦後』と言う場合は、一般的(注)にこの戦争をを基準とする。
- (注)ただし、京都では『この前の戦争または戦(いくさ)』と聞いた場合、『応仁の乱(1467~1477)』を想起する人が一定割合で存在するらしい
野球用語。
プロ野球(NPB)12球団を頂点とする日本の野球は、明治時代に米国より伝えられて以来、原型であるベースボールから徐々に日本化を遂げてきた。
筆者も子供の頃から野球文化に大きな影響を受けながら生きて来たが、その用語の中に軍国主義的な思想が浸透している事に気がついたので、まとめてみたい
ア行)
- 生きる:ランナーが出塁や進塁すること。あるいは帰塁すること。
- 一発(いっぱつ):ホームランの事
- <用例>一発を浴びる。一発を放つ。
- 初陣(ういじん):新チームや新監督が臨む最初の試合や大会
- <用例>初陣に臨む○○ジャパンのメンバー。○○監督が初陣を飾った。
- *他の競技でも用いられる
- 打ち取る(うちとる):投手がアウトを取ること。
- <用例>外野フライに~、ダブルプレーに~
- 援護射撃(えんごしゃげき):投手から見て、味方がヒットやホームランで点を取ってくれること。
- <用例>主砲が満塁弾で怪我から復帰のエースを援護射撃。味方の援護射撃がなく好投の○○投手が10敗目。
- 円陣を組む(えんじんをくむ)
- *他の競技でも用いられる
- *本来の円陣は、全方向に対する警戒や防御の隊形なので、外側を向くのが基本
- 遠征(えんせい)
- *他の競技でも用いられる
- 落とし入れる/陥れる(おとしいれる) <用例>三塁を陥れる
カ行)
- 核弾頭(かくだんとう):出塁率の高さに加え、機動力と長打力も兼ね備えた一番打者
- 監督(かんとく)
- *野球以外の競技でも一般的
- 観兵式(かんぺいしき):プロ野球の試合前に行われる打撃練習で、主力打者がホームランを量産する様子
- *死語化している可能性大
- 犠牲(ぎせい) <用例>犠牲バント、犠牲フライ、犠打
- 切って取る(きってとる):投手が優位を保ちながらアウトを取ること
- <用例>三球三振に~、三者凡退に~
- 機動力(きどうりょく)
- キャンプ:(和製英語で)開幕前の合宿期間
- *米国ではキャンプ(野営地、駐留地、兵舎の意)でなくスプリングトレーニング(春期練習)と呼ぶ(らしい)
- 救援(きゅうえん) <用例>救援投手
- 強行軍(きょうこうぐん):プロ野球で長距離の移動を伴う試合が(ほぼ)休み無しで連続する事
- 強襲安打/ヒット(きょうしゅうあんだ/ヒット):公認野球規則における安打のパターン6つのうちの②<フェアボールが強すぎるか、または弱すぎたため、野手がその打球を処理しようとしたがその機会がなくて打者が安全に一塁に生きた場合>
- 切り込み隊長/斬り込み隊長(きりこみたいちょう):一番バッターの事で、特に足の速い選手を指す
- キレ/切れ <用例>体にキレがある、キレのいい変化球
- 口火を切る(くちびをきる) <用例>先制の口火を切る。反撃の口火を切る。
- 軍(ぐん) <用例>一軍、三軍、自軍、敵軍、二軍、○○軍、○○軍団、両軍
- 撃(げき) <用例>攻撃、打撃、直撃、追撃、反撃
- 攻略(こうりゃく) <用例>敵軍のエースを攻略する
サ行)
- 采配を振るう(さいはいをふるう)
- *野球以外の競技でも使われる
- 刺す(さす):盗塁、進塁、帰塁などを試みる走者を送球でアウトにする事
- 殺(さつ) <用例>挟殺、三重殺、刺殺、封殺、併殺、捕殺
- 死(し) <用例>一死、死球、盗塁死、二死、憤死
- 指揮官:監督の別称
- *野球以外でも使われる
- 仕留める(しとめる)
- 射程圏内(しゃていけんない) <用例> 首位を射程圏内に捉える、ホームラン王も射程圏内に入って来た
- *野球以外の競技でも使われる
- 将(しょう) <用例>主将、智将、名将
- *野球以外の競技でも使われる
- 陣(じん) <用例>初陣、外野陣、救援陣、コーチ陣、首脳陣、守備陣、先発陣、打撃陣、投手陣、内野陣、中継ぎ陣
- 生還(せいかん):ランナーがホームに帰って得点が入る事
- 正々堂々(せいせいどうどう):選手宣誓の決まり文句。
- *原義:中国の兵法書より。軍の隊列が整然とした様子。
- *野球のみに特有と言う訳ではない
- 戦(せん) <用例>延長戦、○回戦、開幕戦、決勝戦、最終戦、投手戦、第○戦、連戦
- *野球以外の競技でも広く使われている
- 先制(せんせい) <用例>先制点(せんせいてん)
タ行)
- 弾(だん) <用例>逆転弾、同点弾、被弾する、満塁弾
- 弾丸ライナー(だんがんらいなー)
- 敵(てき) <用例>強敵、敵失、敵軍
- 鉄壁(てっぺき):守備が固いこと。原義は強固な城壁。
- <用例>外野陣は鉄壁、鉄壁の二遊間
- *野球以外でも使われる
- 鉄砲肩(てっぽうがた):高速で遠投が効く送球を生み出す肩、あるいはその肩を持つ選手
ナ行)
- 二刀流(にとうりゅう)
- 盗む(ぬすむ) <用例>相手投手のモーションを盗む、盗塁
ハ行)
- 爆発(ばくはつ) <用例>主砲が爆発する、猛打爆発
- バズーカ/バズーカ砲:強肩キャッチャー(からの送球)
- バットが火を噴く
- 引きずり下ろす <用例>相手エースをマウンドから~
- 一振り(ひとふり)
- 秘密兵器(ひみつへいき)
- *野球以外でも使われる
- 憤死(ふんし):ランナーがクロスプレー、特に本塁でタッチプレーでアウトになること
- 【用例】本塁憤死、三盗を試みるも憤死、タッチアップで憤死
- 砲(ほう) <用例>大砲、祝砲、主砲、長距離砲
- 暴(ぼう) <用例>暴走、暴投
マ行)
- 猛(もう):<用例>猛攻、猛虎打線、猛打、猛打賞、猛牛打線
ヤ行)
- 矢のような送球(やのようなそうきゅう)
- 遊撃(手)
- *直訳はゲリラ戦(士)
- *当初(明治時代)はショートストップの直訳『短遮』が使われていたようだが・・・
- 翼(よく) <派生>右翼(手)、左翼(手)
ラ行)
【その他①(固有名詞)】
- 金鯱軍、巨人軍、猛虎軍、その他複数
- ダイナマイト打線
- 天王山(てんのうざん):優勝の行方を左右する重要な試合や連続するカード(同一チームと連戦)
- マシンガン打線
- ミサイル打線
【その他②(軍国主義的な慣習)】
- 部活での坊主頭
- 練習中に水が飲めない
- 連帯責任制
【その他③(軍国主義と『歪曲された武士道精神』が結びついた例)】
- 二刀流(にとうりゅう)
- バットに対して、刀(日本刀)に共通する精神性を見出す事
【参考(原語や原型自体に軍事的要素あり】
- キラー:(主にリーグ戦において、)特定のチームに相性が良いピッチャー、あるいは特定の投手に対して強い打者
- *野球以外の競技や日常会話でも使われる
- スカウト:原義は『斥候(せっこう)、偵察』
- ダッグアウト:防空壕(ごう)
- *第一義は『丸木舟』らしい(?)
- ドラフト:兵の徴募(ちょうぼ)
- <用例>ドラフト会議、ドラフト制、ドラフト1位(ドラ1)
- *野球以外の競技でも行われる
- トロフィー:原義は『戦利品』の総称で、カップや盾もトロフィーの一種と言える
- *野球特有の用語と言う訳ではない
- バット:原義は『棍棒(こんぼう)』
- 表彰盾:原型は敵から奪った戦利品
- ベース:第一義ではないが、『基地』と言う意味がある
- ペナント:元々は槍に結び付けられたり、軍艦に掲げられた三角形の旗
- 優勝カップ:原型は、倒した敵の頭蓋骨で祝杯を挙げた事(と言われる)
- *優勝カップの授与は野球特有と言う訳ではない
- 優勝旗:柄が槍型である事が多い
- *野球特有と言う訳ではない
- リリーフ:救援、救助
- 塁(るい) <用例>一塁、帰塁、三塁、残塁、二塁、本塁、満塁、離塁、塁間
- *原語の『ベース(base)』自体に『(軍事)基地』と言う意味がある
【その他(太平洋戦争中に武士道 に反するとされた用語やルール)】
- 隠し球(かくしだま):実際、ルール上で禁止された
- 盗(とう) <派生>三盗、重盗、二盗、本盗
- *『奪』に置き換えられた
- 盗む(ぬすむ) <派生>モーションを盗む、塁を盗む
【まとめ】
- 当初予想した以上に、軍事的要素が注入されている事が分かった。
- 日本において、野球は軍事訓練の一環として保護されたり発展した側面があり、練習や指導にも軍隊の訓練手法が取り込まれた。
- 太平洋戦争中(1941年12月~1945年8月)、英語は『敵性用語』とされ、野球でもカタカナ用語や武士道に反する用語は日本語に置き換えられた話は有名だが、アメリカの国技とも言える野球自体は禁止されなかった事から、野球と軍国主義との親和性の高さがうかがえる。
- *プロ野球は戦況が決定的に悪化した1944年10月まで行われ、敗戦後の1945年11月には再開しており、中止期間は約1年に過ぎなかった!
- 現代において、軍国主義的表現を最も多用しているのは、スポーツ新聞
2025/1/19 改訂(24回目)
2023/8/5 初出
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