【 はじめに 】
筆者は、小説として『竜馬がゆく』は傑作と思っており、個人的にも好きな作品です。
一方で、<坂本龍馬の実像>からの乖離についてもう少し明確にしておくべきだと考えます。 いずれにしろ、竜馬および司馬遼太郎ファンの方が確実に気分を害する内容になっていますので、閲覧はお勧め致しません。
一方で、<坂本龍馬の実像>からの乖離についてもう少し明確にしておくべきだと考えます。 いずれにしろ、竜馬および司馬遼太郎ファンの方が確実に気分を害する内容になっていますので、閲覧はお勧め致しません。
*以下、敬称、尊称省略
坂本龍馬。
幕末の世を駆け抜けた『志士』の代表格として絶大な人気を誇り、多くの書籍、漫画、映像作品、キャラクター商品などの形で様々な龍馬像が作られている。
しかし、それらの基になっているエピソードやセリフの大半は、司馬遼太郎の小説『竜馬がゆく』から引用、転用、派生したものである。
司馬は、主人公を<竜馬>と書き換える事で(*)、『史実に取材したフィクション』であることを明示している(つもりであろう)ものの、その圧倒的な完成度ゆえに事実だったと受け止められる事も多いので、<竜馬>と<龍馬>の違いについて検証してみたい。
(*)もともと新聞の連載小説だったため、当用漢字に含まれない『龍』が使えなかったと言う背景もある
【<龍馬>の実像】
- 変名(偽名)での活動が多く、どういう働きをしたか分かりにくい人物
- < 変名(資料/記録が残っている物のみ)>
- 西郷伊三郎
- 才谷梅太郎または楳太郎(さいだに うめたろう)、取巻の抜六(とりまきの ぬけろく)
- 大浜涛次郎
- 高坂龍次郎
- 自然堂 *変名でなく、号(ごう)とも考えられる
- <戸籍上の氏名>
- 『坂本直陰(なおかげ)』で、それ自体も『直柔(なおなり)』に改名されている
- *つまり『龍馬』自体も通名だが、当時において通名で生活すること自体は珍しい事ではなかった
- *また、土佐では男の子の名前に「動物の名」を入れる事も一般的だったらしい
- 残っている資料が量・質ともに多からず少なからず
- *記録として残しにくい活動が多かった?
- *手紙については間違いなく個性的で面白い。
- *イメージを壊す内容の新資料はこれ以上出てこない方が良い?
- *暗殺者も一般的には”謎”とされているが、見廻組(今井信郎、他)と特定している研究者もいる
- ←三億円事件の最有力容疑者だった人物が公表されない状況と似ている?
- *関わりのあった人の証言も残っているが、内容や印象のバラツキが多く、身長に関してだけでも諸説ある
- 金回りが良かった
- 【例】(料金が高い)手紙を多く書いた。(高価な)写真を名刺代わりに使った。当時最新式の拳銃を持っていた(もらい物と言う事になっている)。ブーツを持っていた。
- 実態はグラバー商会(主力商品は武器)の代理店(兼 用心棒)(兼 スパイ?)
- *グラバー商会自体も香港に拠点を置くジャーディン・マセソン商会(主力商品は茶、武器、アヘン)の代理店で、日本の内戦を長期化(戦力拮抗)させることにより、武器を売りまくるつもりだった。
【あまり強調されない点】
- 剣術(北辰一刀流)の免許皆伝者と言われているが、実際に確認可能なのは長刀のみで、剣術分の証拠は消失した(と言う事になっている)
- もらい物の拳銃を持ち歩いていた
- *もらい物とされているが、物騒かつ稀少かつ高価な物ものをくれる人がいること自体が、そもそも異常
*しかも複数回、違うルートから供与された(とされている)
- 『暗殺死』とされているが、殺害時は『公務員(伏見奉行所員)2名を殺害した罪状による指名手配犯』だったこと
- *この殺害は『近江屋事件』と呼ばれ、ほとんどの場合は、『襲われた』と言う形で記述される
- *これに先立つ寺田屋事件(騒動)の時点では、「変名を使い薩摩藩士を装う不審人物を生け捕り」する計画だったため、『才谷梅太郎』は逃亡することが出来た
【特記事項】
- 若くして亡くなった(満31歳)。
【推測】
- 司馬氏にとって<龍馬>は、骨格や輪郭はしっかりしている一方で自由に肉付けや色付けが出来る、格好の小説素材だった。
- しかし、調べれば調べるほど資料の内容にバラツキや偏りが多く、推測、想像、拡大解釈などで補われた部分が多かった。
【補足】
- 『竜馬がゆく』自体も、明治16年(1883年)に高知の『土陽新聞』で連載された坂崎紫瀾による『汗血千里の駒』が底本となっている
【結論】
- 『梅太郎がゆく』の方が、小説タイトルとして適切だったことに、間違いない
2022/2/26 初出(通算100本目の記事)
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