【始めに】外来語(主に英語からの導入)に興味のない方にはつまらないと思います
カタカナの同源異義語(どうげんいぎご)。
外国の言葉を日本語に採り入れる時、多くの場合カタカナに置き換えをするだけで済むので、手間がほとんどかからない。
一方で、流入経路、発音のゆらぎ、単複の扱い、省略などによって多くのカタカナ表示の『同源異音語』を生み出して来た。
さらには、それぞれが外来語として定着する環境や過程を経て別な単語、すなわち『同源異義語』にまで分化している例があるので、まとめてみたい。
*以下、特に記載の無い単語は英語です
A)
- American:アメリカン○○ と メリケン○○
- <後者の用例>メリケン粉、メリケン波止場
- *舶来、稀少、贅沢などの代名詞だった事が推測される
B)
- bar : バー(棒、洋式酒場) と バル(スペイン式軽食喫茶店兼酒場) と バール(工具、イタリア式軽食喫茶店)
- bass/Bass:バス(低音の声/コントラバス/魚の種類) と バース(元プロ野球選手Randy Bassの登録名) と ベース(低音の楽器)
- bazaar:バザー(学校や教会などの慈善市) と バザール(イスラム圏の百貨市場)
- boot:ブーツ(長靴) と ブート(アメリカ軍の新兵 あるいは コンピューターの起動)
C)
- canvas:カンバス(油絵の画材) と キャンバス/キャンヴァス(油絵の画材、帆布、野球の1~3塁ベース)
- *油絵の画材としてはいずれの発音でも通用する
- caramel(英語)/carmela(ポルトガル語):カルメ焼き(屋台菓子) と キャラメル(飴菓子) と カラメル(砂糖を焦がしたソース) と チャルメラ(楽器)
- chalk : チャコ(布に印をつける裁縫用品) と チョーク(黒板や路面用の筆記具。白墨。)
- channel : チャネル(情報入手経路) と チャンネル(テレビ局や番組カテゴリーの番号。あるいはそれの切り替えダイヤル)
- column:コラム(新聞のコラム欄) と カラム(表計算ソフトの縦の列)
- *原義は『円柱』
- *コラム欄は『縦の欄に横文字で書かれる』形を柱に見立てた言葉だが、日本の新聞は文字が縦書きなので、欄が横になっている。
- cook/Cook:コック(料理人) と クック(料理する または 先頭が大文字で人名)
- cottage:コテージ(田舎小屋、ホテルの離れタイプの客室) と カッテージ(チーズの種類)
- coupe:クーペ(二人乗り馬車/自動車) と コッペ(細長いパン)
- cup:カップ(主に食べ物用) と コップ(主に飲み物用)
- *前者は英語で、不透明な材質の場合が多い
- *後者はポルトガル語式発音の影響を受けており、透明な材質の場合が多い
E)
- extra:エキストラ(映画・ドラマの通行人や客などセリフや役名が無い出演者) と エクストラ(余分、追加、予備)
F)
- festival : フェス(屋外型の音楽イベント) と フェスティバル(宗教的な祭典)
- flag:フラグ(IT用語の目印やドラマの展開予兆) と フラッグ(旗)
- <前者の用例> 犯人フラグ、生存フラグ、恋愛フラグ
<後者の用例> チェッカーフラッグ、フラッグシップショップ(=旗艦店)
G)
- gear:ギア(専門用具類) と ギヤ(歯車、変速機)
- <前者の用例> ヘッドギア、フィッシングギア
- <後者の用例> ギヤチェンジ、ギヤ比、5段ギヤ
- *前者と後者は『ほぼ発音揺らぎ』あるいは『聞こえ方の違い』の範囲内にあり、使用者や規格によって逆になる場合も多い
- *後者は『JIS規格(日本工業規格)で『ギヤ』と表記されている影響も大きいと思われる
- general:ジェネラル(一般の、総括的な) と ゼネラル(一般の、総括的な)*やや古風な発音
- <前者の派生> ジェネリック、ジェネレーター、
<後者の用例> ゼネラルス・トライキ(ゼネスト)、ゼネラル・エレクトリック(GE)、富士通ゼネラル - *前者と後者は『ほぼ発音揺らぎ』の範囲内にあると言えるが、後者はやや古風で堅い印象を与える
- *原語の発音に近いのは『ジェネラル』の方
- glass:ガラス(透明で固いもの一般) と グラス(主に飲み物用食器、まれにメガネ)
- glove:グローブ(手袋) と グラブ(野球用具)
- sheet:シート(平面で薄いもの一般) と シーツ(寝具)
- gum:ガム(食品) と ゴム(工業品)
- gut:ガット(ラケットの弦) と ガッツ(敢闘精神)
- *ガッツは和製英語
H)
- Hanburg:ハンブルグ(都市名) と ハンバーグ(料理)
- heart(s):ハート(心、心情、精神力、♡) と ハツ(食肉としての心臓)
- Hepburn:ヘップバーン(俳優/オードリーの名字) と ヘボン(学者/ヘボン式ローマ字表記の考案者の名字)
- horn:ホルン(渦巻き型の管楽器) と ホーン(ウシ、シカ、ヤギ等の角。自動車のクラクション。)
I)
- ink:インク(主に筆やペン用) と インキ(主に印刷機用で、特に粘性が高いもの?)
- iron:アイアン(ゴルフ用品、鉄製、鉄のように強い) と アイロン(家電)
J)
- jack/Jack:ジャッキ(自動車等を持ち上げる機械) と ジャック(トランプで11の札、男性の名)
- jersey/Jersey:ジャージ(伸縮性の運動着で上下セットの場合が多い) と ジャージー(ラグビー用の上着、乳牛の品種)
- *『ラグビー用の上着』は、ジャージとジャージーで表記揺れがある
- jumper : ジャンパー(跳躍する人) と ジャンバー(屋外用のカジュアルな上着)
K)
- Kobe:コービー・ブライアント(元バスケットボール選手 と 神戸(都市名)
L)
- label:ラベル(表示用に貼るシート類) と レーベル(レコード会社内のジャンル別ブランド)
- *レーベルの方が実際の原音に近い
- *ドイツ語のレッテルも同じ意味だが、日本語だと一般的に”不良”のイメージを持つ
- layer:レイヤー(層)とレア(レア・チーズケーキ)
- *後者(ケーキ)の方も本来は『レイヤー・・・』”の方が適切か?『レヤー、レーヤー・・・』の表記例もあり
- lemonade:ラムネ(冷たい)と レモネード(温かい)
- *レモネードは本来冷たい飲み物(レモンスカッシュに近い)
M)
- machine:マシン(機械類全般) と ミシン(縫製機)
- micro:マイクロ(千分の一㍉を表す長さの単位で記号:μ、極小化された物) と ミクロ(微視的な、微細な)
- mince(d):ミンチ(ひき肉/みじん切り) と メンチ(揚げ物)
- mix : ミックス(混ぜる、混合) と ミクス(調合済粉末、粉末か顆粒の『○○の素』)
- 【後者の例】シチューミクス、ホットケーキミクス
- *『ミクス』の方が英語の発音には近い
- mobile:モバイル(移動型の) と モビール(吊り下げ型で動きのある飾り) と モービル(動力付の乗り物)
- musk :マスク(高級メロン) と ムスク(香水)
- *ムスクの方が英語の原音に近い
N)
- nut : ナット(留めネジ。ボルトと組み合わせて使う) と ナッツ(木の実、特に食用になる物)
O)
- omunibus:オムニバス(文学/音楽/番組などの総集編) と バス(座席数が多い自動車)
- *元々は『乗合馬車』の事
P)
- pound : パウンド(重さの単位) と ポンド(英国の通貨)
- polyp : ポリプ(刺胞動物の構造) と ポリープ(医学用語)
- *前者の例:イソギンチャク、サンゴ
- *後者の例:喉のポリープ、大腸ポリープ
- profile:プロフィール(経歴紹介) と プロファイル/プロファイリング(犯人像の推理手法)
- puma:プーマ(スポーツ用品メーカー) と ピューマ(肉食動物)
- *前者のロゴは大文字
- *後者の別名はcougar/クーガー
- punch:パンチ(拳で打つこと、げんこつ、紙に穴を空ける) と ポンチ(フルーツポンチ、革や金属板に穴を空けたり刻印する工具)
R)
- recorder:リコーダー(縦笛) と レコーダー(記録機器全般)
- release:リリース(離す、発表する) と レリーズ(カメラのシャッターを切ること)
- relief:リリーフ(助ける) と レリーフ(浮き彫り)
- report:レポート(主に紙の報告書) と リポート(主に音声・動画での報告)
- ruby:ルビー(宝石) と ルビ(漢字の印刷物につける振り仮名)
S)
- second:セカンド (2番目、二塁手) と セコンド(ボクシングのサポート員)
- shake :シェイク/シェーク(振る) と セーキ(ミルクセーキ)
- sheet:シート(紙や座席) と シーツ(寝具)
- short:ショート(短い、短絡、遊撃手) と ショーツ(下着、半ズボン)
- shovel:シャベル(人力で穴を掘る道具) と ショベル(穴を掘る重機)
- stick:スティック(棒) と ステッキ(杖) と チック(円筒形かつ固形タイプの塗り薬)
- strike:ストライキ(スト、労働争議の一形態) と ストライク(野球・ボウリング用語)
- squeeze:スクイズ(野球のスクイズバント) と スクイーズ(搾る、搾り取る)
T)
- tight:タイト(きつい/きつく) と タイツ(衣類 )
- tag:タグ(札) と タッグ(プロレスのチーム )
- truck:トラック(自動車) と トロッコ(簡易鉄道)
V)
- vent:ベント(穴、通気口) と ベンツ(ジャケットやスカートの裾の切れ目/スリット)
- volley:バレー(バレーボール/排球) と ボレー(テニスやサッカーでボールがバウンドする前に打つ/蹴ること)
- *両方とも『ヴォリィー』と発音した方が通じるか?
W)
- white:ホワイト(白色) と ワイ(シャツ)
- *ワイシャツ/Yシャツは和製英語
【まとめ】
- それぞれの言葉が流入してきた経路の違いが最も影響しているか
- 『古い時代に聞こえたままを音写』したパターンの方が実践的で通じやすい気がする。
- <実例>
- ウオーター(水) ➡「ワラ」か「ワタ」
- What time is it now?(今何時だい?) ➡「掘った芋いじるな」
- ウオッチ(船の見張り番/腕時計) ➡ ワッチ
- チケット(入場券/乗車券) ➡ テケツ
- チェック(鉄道の預け荷物) ➡ チッキ
2024/11/23 改訂(32回目)
2022/04/23 初出
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