外国語の映画や文学作品の邦題。
原題を忠実に和訳したりカタカナに置き換えたりするのが基本である事は間違いない。
しかし、原題の中には、背景を知らない外国人には理解が不可能だったり、説明的過ぎて地味だったり、必要以上に詩的で作品内容と合っていないケースも多い。
その結果、苦肉の策として原題との乖離が大きい邦題が多く生み出されて来たが、中には邦題の方が作品の世界観に合っていたり、インパクトが大きい例もあるので、まとめてみたい。
*『英語原題の直訳』は筆者によるもの
- 【原題直訳】愛、目映さに溢れるもの(小説/1952)
- 【邦題】慕情
- *原題(英語):Love Is a Many-Splendored Thing
- *小説の邦訳(1970)は絶版となっており、映画とその主題歌(1955)の方が有名
- *『慕情』と言う言葉は、他の創作(者)にも影響を与えている
- 【原題直訳】アペニンからアンデスまで(小説/1886年)
- 【邦題】母をたずねて三千里
- *原題(イタリア語):Dagli Appennini alle Ande
- *「クオーレ(愛)」と言う道徳小説集の、「作中説話」の一つで、原作の量は十数ページ(岩波文庫など邦訳複数あり)程度らしい
- 【原題直訳】生かしちゃおけない仲間たち(映画/1956)
- 【邦題】荒野のガンマン
- *原題(英語):The Deadly Companions
- 【原題直訳】ウォルター・ミッティの秘密の生活(映画/1947)
- 【邦題】虹を掴む男(にじをつかむおとこ)
- *原題(英語):The Secret Life of Walter Mitty)
- *原作は同名の小説
- *日本映画にも『虹をつかむ男』と言うシリーズがある(1996と1997)
- 【原題直訳】凍ってる(映画/2013)
- 【邦題】アナと雪の女王
- *原題(英語):Frozen
- 【原題直訳】最初の流血(映画/1982)
- 【邦題】ランボー
- *原題(英語): First Blood
- *原題を意訳すると「先手必勝」が近いか?
- *続編からは「ランボー」が逆採用されたらしい
- 【原題直訳】修道女のふり(映画/1992)
- 【邦題】天使にラブ・ソングを…
- *原題(英語): Sister Act
- *原題をカタカナに置き換えるだけでは意味が分かりにくいし、直訳でも地味なので、この邦題にする必然性はあったと思う。
- 【原題直訳】士官と紳士(映画/1982)
- 【邦題】愛と青春の旅だち
- *原題(英語):An Officer and a Gentleman
- *軍(アメリカ海軍?)規則書中の項目「Conduct unbecoming an officer and a gentleman (士官や紳士に相応しくない行為)」の省略表現らしく、ネイティブでも意味が理解出来ない可能性あり。
- 【原題直訳】死者の曙(あけぼの)(映画/1978)
- 【邦題】ゾンビ
- *原題(英語): Dawn of the Dead
- *"ゾンビ映画”と言うジャンルも確立するほど定着した邦題
- 【原題直訳】更なる数ドルの為に(映画/1965)
- 【邦題】夕陽のガンマン
- *原題(伊/英語): Per qualche dollaro in più/For a Few Dollars More
- 【原題直訳】重慶の森(じゅうけいのもり)(映画/1994)
- 【邦題】恋する惑星
- *原題(広東語):重慶森林(ちょんきんさんらむ)
- *小説『ノルウェイの森』からの着想と言う説もある
- 【原題直訳】多忙な日の夜(映画/1964年)
- 【邦題】ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!
- *原題(英語):A Hard Day's Night
- *セットで配送されたニュース映画の題名(The Beatles come to town)と勘違いしたと言う説も有力
- 【原題直訳】小さな婦人たち(小説/1868)
- 【邦題】道草物語
- *原題(英語):Little Women
- *数え切れないほど映画化、翻訳、アニメ化、絵本化、舞台化されており、『若草物語以外』の邦題も多い
- 【原題直訳】2年間の休暇(少年向け冒険小説/1888年)
- 【邦題】十五少年漂流記
- *原題(仏語):Deux Ans de Vacances
- 【原題直訳】ピッパ・リーの私生活(映画/2009年)
- 【邦題】50歳の恋愛白書
- *原題:The Private Lives of Pippa Lee
- 【原題直訳】不可能な任務(テレビドラマ/1967~1968)
- 【邦題】スパイ大作戦
- *原題: Mission Impossilbe
- *映画シリーズ(1996~)ではカタカナへの置き換えた、『ミッションインポッシブル』
- 【原題直訳】ボニー と クライド(映画/1967年)
- 【邦題】俺たちに明日はない
- *原題(英語):Bonnie and Clyde
- *アメリカで強盗を繰り返したカップルの名前。活動(?)内容に劇的な要素があり、日本だと石川五右衛門や鼠小僧次郎吉と言ったイメージか?
- 【原題直訳】緑の切妻屋根のアン(文学/1908)
- 【邦題】赤毛のアン(邦訳/1952)
- *原題(英語):Anne of Green Gables
- *邦題は『窓辺に倚(よる)る少女』 に決まりかけていた
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- 【原題直訳】我が成功の秘密(映画/1987)
- 【邦題】摩天楼はバラ色に
- *原題(英語):The Secret of My Success
- 【原題(中国語/英語)直訳】竜虎の激闘/ドラゴン登場(映画/1973)
- 【邦題】燃えよドラゴン
- *原題(中国語/英語):龍爭虎鬥/Enter the Dragon
- *アメリカと香港の共同制作
- 【原題直訳】モンテ・クリスト伯爵(新聞連載小説/1844~1846年)
- 【邦題】巌窟王(がんくつおう)
- *原題(フランス語):Le Comte de Monte-Cristo
- *現在は"モンテ・クリスト伯"の方が主流
【原題が不明な例】
- 【邦題】東方見聞録(旅行記/1298年ごろに原本が口述筆記されたと推定される)
- *原本が現存しない一方、写本が140種以上確認されているため、国によってタイトルがバラバラで、(以下、Wikipediaより転記)他国では『世界の記述』( “La Description du Monde”、“Le Devisement du monde” )、『驚異の書』( Livre des Merveilles ) とも呼ばれる[注釈 1]。また、写本名では、『イル・ミリオーネ』( “Il Milione”、100万)というタイトルが有名である。
【まとめ】
- 覚えやすさとか言いやすさ(宣伝、誰かを誘う、映画館で切符を買う、他)を考慮してだろうか、映画のタイトルで大きな改変が多い。
- 逆に、日本語➡英語でも同じようなケースがある。
- 【例】上を向いて歩こう(歌謡曲)→SUKIYAKI(スキヤキ)、男はつらいよ(映画シリーズ)→Tora-san(寅さん)
- 原題(カタカナでの音写)を理解出来る観客や読者が増えている分、独自性の高い邦題は以前より減っている
2024/12/15 改訂(13回目)
2021/3/27 初出
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