城郭(じょうかく)。
一般的には城(しろ)またはお城(おしろ)、小規模な物だと砦(とりで)や塁(るい)と呼ばれる。
『お城(城郭風建築物)を自分で作ってしまう人』から、『皇居が城跡(しろあと)である事を知らない人』まで、その関わりや興味の程度は様々だが、単なる建築物と言う枠を超越した存在感を放ち続けており、城郭用語からは相当数の転用、慣用表現、派生語などが生じている。
- *城郭風建築:城郭が軍事施設して最後に使われた(とされる)戊辰戦争の終結以降(明治二年/1869年~)に『城郭を模して』建てられた物で、規模、材料、工法、クオリティは様々。
- *2022年時点で、江戸時代以前からの現存天守は12あるが、個人所有の物はなく、(当然ながら)住んでいる人もいない。
その中には日常会話の中に浸透していて、気づかないうちに使っているレベルの例もあるので、まとめてみたい。
*除外対象(多すぎるため) : 地名、人名、施設名、作品名
ア行)
- 人は石垣人は城(ひとはいしがきひとはしろ)
- 一国一城の主(いっこくいちじょうのあるじ)
- 雲梯(うんてい):原義は攻城用の長いはしごで、現在は遊具として存在している。
- 英国人の家庭はその人の城(えいこくじんのかていはそのひとのしろ)
- *原語(英語):An Englishman's home is his castle.
- 大奥(おおおく):江戸城内の女性による管轄エリア
- 大手(おおて):大手門(おおてもん) ⇒ 大手前(おおてまえ)、大手筋(おおてすじ) ⇒ 大手百貨店、大手商社、大手メーカーなど
- 小田原評定(おだわらひょうじょう):多くの時間を費やしながら決定や決断に至らない残念な議論や会議の事
- 落とす/落ちる:『落城(らくじょう)』の動詞型省略形。
- <用例>口説き落とす、なかなか落ちない
- 尾張名古屋は城でもつ(おわりなごやはしろでもつ)
カ行)
- 外郭団体(がいかくだんだい)
- 牙城(がじょう)
- 空城の計(くうじょうのけい)
- 口では大阪の城も建つ(くちではおおさかのしろもたつ)
- 黒鉄の城/黑鐵の城(くろがねのしろ):戦艦の別称
- 傾城(けいせい):国の支配者を骨抜きにして治政に悪影響を与えるほどの美女(の例え)。敵国を弱体化させる兵法としても使われる。
- この城(このしろ):寿司ネタに使われる魚『コノシロ』の当て字で、小肌/コハダと言い換えられる場合が多い
サ行)
- 最後の砦(さいごのとりで)
- 桜田門(さくらだもん) :現存する江戸城の門の1つで、門前にある『警視庁』の別称(しばしば自称)に派生。
- 指図(さしず):城の各設備の配置図
- 死角(しかく):(守備側から見て)建造物の陰になるため、攻撃側から矢や銃弾の直撃を受けない範囲
- 下町(したまち):『城下町(しろしたまち)』の省略?
- 忍び返し(しのびがえし):侵入防止用の建築部材
- 自分の城(じぶんのしろ):マイホームの異称。自分の趣味を反映した空間。
- シャチホコばる/鯱張る(しゃちほこばる)
- 城下町(じょうかまち)
- 城下かれい(しろしたカレイ):ブランド魚化したマコガレイ
- 外堀を埋める/埋められる(そとぼりをうめる/うめられる):直接的な戦闘が始まる前の時点で、戦略を用いて守備側の勝ち目をほぼ消滅させる事。あるいはその状態。
タ行)
- 築城十年落城一日読み方(ちくじょうじゅうねんらくじょういちじつ)
- *「築城三年~」とも言う(らしい)
- 鉄壁(鉄壁):『金城鉄壁(きんじょうてっぺき)』より
- 天守閣美濃(てんしゅかくみの):将棋における囲い(守備陣形)の一種
- *美濃囲い(みのがこい)の派生(らしい)
ナ行)
- 縄張り(なわばり):曲輪(くるわ)や建造物の配置を決め、その範囲を縄で囲って示す作業。
- 難攻不落(なんこうふらく)
- 二段構え(にだんがまえ):本丸に近い方の郭(くるわ)が、高くなって行く構造。
- *三段、四段(以上)もある
*相撲にも『三段構え』と言う型がある
- 抜け穴(ぬけあな):外部と繋がっている秘密の通路
- <派生>法律や制度などの不備や矛盾点、またはそれを探して利用すること。
- *諸説あり
*抜け道(ぬけみち)は別語源
- 根城/根城にする(ねじろ/ねじろにする)
ハ行)
- 人は城、人は石垣、人は堀、情けは味方、仇は敵なり(ひとはしろ、ひとはいしがき、ひとはほり、なさけはみかた、かたきはてきなり)
- 兵糧攻め(ひょうろうぜめ)
- 本丸(ほんまる):天守(閣)がある郭(くるわ)。組織の中枢や企業の主力事業を指す用語に派生。
ヤ行)
- 矢倉囲い(やぐらがこい):将棋における守備陣形のひとつ
- *玉将/王将が囲いの定位置に収まる事を『入城』と呼ぶ(場合がある)
- *バリエーションも豊富(銀矢倉、総矢倉、菱矢倉、他)
- 櫓投げ(やぐらなげ):相撲および柔道の技
ラ行)
- 落城(らくじょう):城が占領されるか、守備側が降伏すること。転じて、手間と時間をかけて、もともと乗り気でない人を説得すること。
- 塁(るい):①砦、支城 ②野球用語『ベース』の和訳
- <②の用例>本塁打、満塁、盗塁
- 籠城(ろうじょう)
【番外】砲台
- 台場仕立て(だいばしたて):紳士用スーツの『内ポケットの周囲まで裏地で囲む』加工で、幕末の江戸湾内に設置された砲台(跡)に形が似ている事から命名された。手間が掛かるため、オーダーメイドのオプションとして追加料金が掛かる場合が多い。
【番外】軍事的(攻撃的)要素がない例
- 郭公/カッコウ:別名、閑古鳥(かんこどり)
- *鳴き声(カッコー)の当て字と思われる
- 胸郭(きょうかく):医学用語で胸全体の事。肋骨と背骨で内臓が守られている。
- 不夜城(ふやじょう): 『城』は中国語で『防御壁に囲まれた都市』を差し、『多くの人が出入りするビル(群)』や『ショッピングセンター/モール』の名称にも派生している
- 輪郭(りんかく)
【まとめ】
- 思ったより出て来た。
- *逆に、地名、人名、施設名まで含めてしまうと、一大テーマになって調べ切れない
- (当然ながら)江戸城、大阪城、名古屋城の存在感や歴史的影響がトップ3だった事が伺われる。
- 政治、経済、文化の中核として発展~存在し、現在(21世紀)でも地域のシンボルとして健在。
- *跡地(城址)に、庁舎、大型イベント会場、学校などが設置されている例も多い
- *天守(天守閣)や主要な櫓が再建・復元されるケースも多い
2024/9/7 改訂(8回目)
2022/6/3 初出
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