日本人と動物の関係。
家族と見なされるものから、存在自体が認識されないものまで、その関係性の深さや濃淡は様々だが、それらに由来する言葉や慣用表現の量から、どの生き物が日本人に最も影響を与えて来たか検証してみたい。
【犬/イヌ】 ネガティブなものが多い
- 犬かき(泳法の一種)
- 犬が西向きゃ尾は東
- 犬食い
- 犬死に
- 犬畜生にも劣る(いぬちくしょうにもおとる)
- 犬笛(いぬぶえ)
- 犬も歩けば棒に当たる
- 飼い犬に手を咬まれる
- 狂犬(きょうけん)
- 犬猿の仲(けんえんのなか)
- 犬歯(けんし)
- 権力の犬
- 狛犬(こまいぬ)
- 野良犬
- 夫婦喧嘩は犬も食わない
- 負け犬
- 負け犬の遠吠え
【牛/ウシ】
- 海牛/ウミウシ
- 蝸牛(かぎゅう):カタツムリの別名、耳の内部器官
- 牛耳る(ぎゅうじる)
- 牛歩(ぎゅうほ)
【馬】 乗馬に冠する表現も多い
- 足並みを揃える?
- 当て馬(あてうま)
- 馬が合う
- 馬が西向むきゃ尾は東
- 馬面(うまづら)
- ウマヅラハギ
- 馬乗りになる
- 馬の耳に念仏
- 絵馬(えま)
- 勝ち馬に乗る
- カマドウマ/竈馬:昆虫
- 鞍替えする(くらがえする)
- 毛並みが良い?
- 下馬評(げばひょう)
- 駒(こま):ボードゲームでプレイヤーが動かす部品
- 駒が揃う(こまがそろう)
- 駒下駄(こまげた)
- 駒を進める、
- (○○界の)サラブレッド
- じゃじゃ馬
- 将を射んと欲すれば先ず馬を射よ
- 尻馬に乗る(しりうまにのる)
- 走馬灯(そうまとう)
- 竹馬(たけうま/ちくば)
- ダークホース
- 手綱さばき(たづなさばき)
- 手綱を締める/緩める(たづなをしめる/ゆるめる)
- 竹馬の友(ちくばのとも)
- ディスクジョッキーどこの馬の骨だか分からない
- 天高く馬肥ゆる秋(てんたかくうまこゆるあき)
- 南船北馬(なんせんほくば)
- 馬鹿/バカ
- 馬脚を現わす(ばきゃくをあらわす)、
- 拍車をかける(はくしゃをかける)
- 白馬に乗った王子様(はくばにのったおうじさま)
- 馬耳東風(ばじとうふう)、
- 馬車馬のように働く(ばしゃうまのようにはたらく)、
- 馬蹄形(ばていけい)
- 馬頭観音(ばとうかんのん)
- 鼻の差(はなのさ):競馬用語
- バフンウニ/馬糞海胆
- 馬力(ばりき):力が強いこと、機械の出力を表す単位、馬肉(ばにく)の言い換え
- 馬齢を重ねる(ばれいを重ねる)
- 馬鈴薯/ばれいしょ((=じゃがいも)
- 瓢箪から駒(ひょうたんからこま)
- 無事これ名馬(ぶじこれめいば)
- ホースラディッシュ/horseradish:別名 西洋わさび、山わさび
- 馬子にも衣装(まごにもいしょう)
- 鞭を入れる(むちを入れる)
- 瑪瑙/メノウ:宝石の種類。馬の脳に似ていることから(?] 【瑪】の文字はこれ以外に使われない(らしい)。
- 野次馬(ヤジウマ)
【猿/サル】
- 猿芝居(さるしばい)
- サルスベリ/百日紅:木の種類。樹皮がすべすべしている。
- 猿知恵(さるぢえ)猿梨/サルナシ 猿真似(さるまね)
- 猿も木から落ちる
- サルマタ/猿股:和式のトランクスパンツ
- モンキー:<派生例>モンキーターン、モンキー乗り、モンキーレンチ、他
【狸/タヌキ】
- タヌキ親父
- タヌキそば/うどん
- 狸寝入り
- 捕らぬ狸の皮算用(とらぬたぬきのかわざんよう)
【虎/トラ】
- 虎口に入る(ここう)
- 虎穴に入らずんば虎児を得ず(こけつにいらずんばこじをえず)、
- 虎視眈々(こしたんたん)
- 前門の虎後門の狼(ぜんもんのトラこうもんのオオカミ)
- 虎の威を借る狐(とらのいをかるきつね)
- トラ刈り
- 虎テープ:黄色と黒の縞柄テープ。主に立入禁止や危険に対する注意喚起に使われる。
- 虎の子:大事な財産や資産、
- 虎は千里往って千里還る
- 虎目石:虎眼石、タイガーズアイ
- 虎は死して皮を残す 虎の巻
- トラトラトラ
- 手負いの虎
- 虎の尾を踏む
- 虎は死して皮を残す
- ブラックタイガー:ウシエビの市場およぼ流通上での名称
【豚/ブタと豬/イノシシ】
- 猪目(いのめ):イノシシの目を模した図形で、ほぼハートマーク(♡)と同じに見える。
- 猪突猛進(ちょとつもうしん)
- 豚に真珠(ぶたにしんじゅ)
- ハイブリッド:<語源>ブタとイノシシを掛け合わせたもの。イノブタと同意。
【猫/ネコ】
- 海猫/ウミネコ:鳥類
- 借りてきた猫
- キャッツアイ(宝石)
- キャットウオーク(建築物や構造物の保守用通路)、
- 窮鼠(きゅうそ)猫を噛む、
- 泥棒猫(どろぼうねこ)
- 猫いらず(殺鼠剤)
- 猫かわいがり
- 猫が顔を洗う(と雨になる)
- 猫車(ねこぐるま):運搬用一輪車
- 猫熊(ねこぐま):ジャイアントパンダの中国語名
- 猫鮫(ねこざめ):魚類
- 猫舌(ねこざめ)
- 猫じゃらし:植物
- 猫背(ねこぜ)
- 猫だまし:相撲の技
- 猫っ毛(ねこっけ):細いくせ毛?
- 猫撫で声(ねこなでごえ)
- 猫に小判
- 猫にまたたび
- 猫の手も借りたい
- 猫の額ほど:自宅の庭の狭さ強調する謙遜表現
- 猫の目のよう(に変化が激しい)
- ネコババ
- 猫も杓子も(ねこもしゃくしも)
- 猫またぎ
- 猫まんま
- 猫をかぶる
- 化け猫
- 招き猫
【鼠/ネズミ】
- 窮鼠猫を噛む(きゅうそねこをかむ)、
- コマネズミのように働く
- 大山鳴動して鼠一匹(たいざんめいどうしてねずみいっぴき)
- 濡れネズミ
- ネズミ講
- ネズミ算
- ネズミ取り(=スピード違反の取り締り)
- 袋のネズミ
- 豚もおだてりゃ木に登る
- マウス:コンピューターの入力機
【羊/ヒツジ】
- スケープゴート:贖罪の山羊
- 羊の皮を被った狼
- 羊頭狗肉(ようとうくにく)
- 迷える子羊
- 羊羹/ヨウカン
【ライオン/獅子(しし)】
- 唐獅子牡丹(からじしぼたん)
- 獅子鼻(ししばな)
- 獅子奮迅(ししふんじん)
- 獅子舞(ししまい)
- 獅子頭(シズトウ):中華料理の一種
- 眠れる獅子
- ライオンハート(lionhearted)(勇敢な)、、
【その他の哺乳類】
- 一匹狼、ウサギ小屋(狭い家)、狼少年、送り狼、同じ穴の狢(ムジナ)、キツネうどん/蕎麦、キツネ目、客寄せパンダ、金木犀(きんもくせい)、鯨尺(くじらじゃく)、鯨飲馬食(げいいんばしょく)、シカト、象牙の塔(ぞうげのとう)、二兎を追う者は一兎をも得ず、ハイエナ(意地汚くて貪欲な人物)、パンダ柄、パンダ目、ヒョウ柄、豹変(ひょうへん)、マンモス○○、女狐(めぎつね)、『金持ちが、神の国に入るよりも、ラクダが針の穴を通る方が簡単』
【カラス】
- 烏合の衆
- カラスの濡れ羽色
- 月夜のカラス
【鶴/ツル】
- 鶴の一声
- 掃溜めに鶴(はきだめにつる)
【鳶/トンビ/トビ】
- 鳶口(とびぐち)
- 鳶職(とびしょく)
- トンビがタカを生む
- トンビに油揚げをさらわれる
【鳩/ハト】
- 鳩尾の板(きゅうびのいた)
- 鳩が豆鉄砲を喰らったよう
- 鳩麦/ハトムギ
- 鳩胸(はとむね)
- ハトメ/鳩目
【鳥類】
- 一石二鳥(いっせきにちょう)、ウグイス嬢、鵜呑み(にする)、鵜の目鷹の目(うのめたかのめ)、鷹揚(おうよう)、カモ(にする)、カモネギ/カモがネギを背負ってやって来る、カラスの足跡、カラスの行水、閑古鳥が鳴く、孔雀明王(くじゃくみょうおう)、けんもほろろ、ゴルフ用語(アルバドロス、イーグル、バーディ)、雀の涙、正鵠(せいこく)を得る/射る、鷹の爪、千鳥足、鳶口(とびぐち)、鳶職(とびしょく)、鳥肌が立つ、チキンレース、トンビがタカを生む、トンビに油揚げをさらわれる、ひよっこ、若いツバメ、鷲づかみ、鷲鼻(わしばな)
【は虫類】
- ウワバミ/蟒蛇、蛇の道は蛇(じゃのみちはへび)、蛇足(だそく)、トカゲの尻尾切り、とぐろを巻く
【両生類】
- 井の中の蛙(いのなかのかわず)、カエルの子はカエル、錢蛙(ぜにがえる)、茹でガエル
【鰻/ウナギ】
- 鰻の寝床(うなぎのねどこ)
- うなぎ登り
【鯛/タイ】
- 腐っても鯛
- 鯛の鯛
- 鰻線(まんせん)
【鯔/ボラ】 <出世魚として>オボコ ➡ イナ ➡ ボラ ➡ トド ➡ 卵
- いなせ//鯔背
- おぼこい
- 唐墨/カラスミ:卵(卵巣)の加工品
- トドの詰まり
【その他魚類】
- 鰯雲(いわし雲)、魚の目(ウオノメ)、唐墨/カラスミ、サバを読む、鮫肌(さめはだ)、白魚のような指、死んだ魚のような目、水魚の交わり、ドジョウすくい、二匹目のドジョウ、(冷凍の)マグロ状態、
【軟体類】
- セピア色、タコ、タコ足配線、タコ部屋、引っ張りダコ、法螺吹き(ほらふき)、茹でダコ、
【昆虫】
- 蟻一匹入る隙間もない、アリとキリギリス、蟻の一穴(ありのいっけつ)、蟻の一寸の虫にも五分の魂、男やもめに蛆が湧く(おとこやもめにうじがわく)、蚊の鳴くような声、米つきバッタ、(○○の)ダニ、玉虫色(の回答)、蝶よ花よと育てられる、つつがなく、飛んで火に入る夏の虫、泣きっ面に蜂、バグ、働きアリ、働きバチ、腹の虫(が鳴く)、虫の息、虫の知らせ、虫が好かない、虫けら、虫ゴム、虫の居所が悪い、虫眼鏡、虫も殺さぬ(ような顔)、悪いムシがつく
【昆虫以外の節足動物】
海老反り、海老で鯛を釣る、蜘蛛の子を散らす、蛇蝎のごとく(だかつのごとく)
【想像上の動物/聖獣】
おかっぱ頭、河童の川流れ(かっぱの川流れ)、カッパ巻、画龍点睛を欠く(がりょうてんせいをかく)、麒麟児(きりんじ)、逆鱗に触れる(げきりんにふれる)、竜頭蛇尾(りゅうとうだび)、
【まとめ】
- 由来表現の数に基づくと、日本人に最も影響を与えてきた動物のトップスリーは次の通り
- ①馬 ②猫 ③犬 ④虎 ⑤鼠
- 馬がトップの理由
- 有史以来、自動車が実用化されるまで、陸上における軍事・通信・輸送などの各分野で最速に位置した手段であり、保有する馬の質と量プラス乗馬技術が、国家レベルの命運を分ける要因となったケースも枚挙に暇(まいきょにいとま)がない。
- 駱駝、羊/山羊、象などが上位に来る国や地域もあるだろう
【グロテスク/物騒に感じる(はず)】
- 鬼殻焼き👹:海老の串焼き
- 親子丼:鶏肉の卵とじを乗せたご飯もの
- カッパ巻き:寿司の巻物
- かぶと焼き/兜焼き:魚の頭部を焼いた料理
- かぶと煮/兜煮:魚の頭部を甘い味付けで煮た料理
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鯛のかぶと煮のサンプル / 東京都区内 / 2025年2月
- きつねそば/うどん:甘辛く煮た油揚げが乗っている
-
🍜 そば屋のメニュー(抜粋)
むじな・きつね・たぬきが並んでいる
東京都区内 / 2026年4月
- 地獄焼き(じごくやき):生きている食材(主に貝)を客の前で焼く料理
- 雀焼き:鮒の串焼き
- 鷹の爪:トウガラシ
- 他人丼:そば屋のご飯もの
- たぬきそば/うどん:天かす(揚げ玉)が乗っている
- 多くの店で【2番目に安いメニュー】であることが多い
- ハチノス/蜂の巣:焼肉
- 半殺し(はんごろし):米粒の食感を残した餅
- むじなそば/うどん:【きつね】と【たぬき】のミックスで、油揚げと天かす(揚げ玉)が両方乗っている
- 目玉焼き:卵料理
- 山鯨/山くじら:イノシシ肉の言い換え
【食材や料理名とは思えない(はず)】
- 磯辺焼(いそべやき):海苔を巻いた焼き餅
- 桜鍋(さくらなべ):馬肉を使ったすき焼き
- ザブトン/座布団:焼肉の部位
- ダルマ(達磨?):焼肉の部位
- 鉄火(てっか):寿司の巻物(まれに丼)
- テッポウ(鉄砲):ホルモン焼、もつ焼
- トンビ(鳶?):焼肉の部位
- バクダン:寿司店のおつまみ あるいは 丼
- ぼたん鍋/牡丹鍋:イノシシの肉を使った味噌仕立てのすき焼き
- ヤゲン/薬研:焼き鳥の部位
【ネーミングと実態が合っていない】
- 鯛焼き/タイ焼き:鯛は使われていない
- 羊羹(ヨウカン):本来は中国語で、『羊肉入りのとろみ付きスープ(または煮こごり)』の意味
- *中国語話者にとって、『芋羊羹』になると更に理解不可能だと思われる
【日本人でも知らない割合が高い(と思われる)】
- そばなえ:漢字で『蕎麦苗』。そば屋の酒肴(おつまみ)で、蕎麦の芽(スプラウト)のおひたし。
- みそまめ/味噌豆:鰻屋の酒肴(おつまみ)で、大豆の水煮
【発生する背景】
- 食材や料理のアップグレード感(高い料金を設定し易い)、何かにあやかりたい、既存品よりインパクトを与えたい、見立て、省略、洒落、忌み言葉、隠語、符丁など、いろいろ
- 仏教の影響:明治時代になるまで、獣肉を表立って食べる事が憚(はばから)れた影響も大きいか
【まとめ】
- 生活に余裕が生まれると食事が単なる栄養摂取の行為から離れて行くが、料理名の多様性はその余裕度が高いほど生まれやすい(と思われる)