有名な美術・芸術作品や建築物など。
それらの大半はその技術の巧みさや完成度の高さゆえに評価されているが、中には未完成、欠損、瑕疵(かし)などが特徴となっている例もあるので、まとめてみたい。
*鑑賞/拝観/利用され続けている例のみを採り上げています
*聖書や仏典などを題材とする、最初から信仰対象として製作された作品は除外しています。
【絵画】
- モナ・リザ:作者のレオナルド・ダ・ビンチの晩年、4年に渡り描かれた作品。
- 死の直前まで手を入れていた(と言われている)。また、本来のサイズより左右が切り落とされて狭くなっている(と言われている)
- *作者が注文納期を守らない事は有名で、未完成作品自体は他にも多数ある(と言われている)。
【像】
- ギリシャ彫刻の色について:白色のイメージが定着しているが、『モデルが本来持つ色彩に基づき着色されているのが元来の姿』(と言う事が証明されている)
- 上野大仏:仏像の【顔面】を祭ったパゴダ(仏塔)
- 【主な被災歴】*Wikipediaの上野大仏より
- 頭部落下2回(1649、1923)、頭部溶解1回(1841)、倒壊1回(1647)、金属供出による解体1回(1940)
- 本来は全身像だったものが、度重なる再建・破壊・解体などを経て、現在(2025年)は顔面しか残っていない。
- ところが、『これ以上落ち(ようが)ない』と言うことから、受験合格祈願の対象となっている。
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【現物画像】
- 2025年7月撮影 / 東京都台東区
- サモトラケのニケ(ニケ像):大理石像。頭部が欠損。
- *スポーツブランド『NIKE/ナイキ』のモチーフと言われている
- ロンダニーニのピエタ:大理石像。ミケランジェロ最後の作品で未完成。
- *ミケランジェロは同じテーマで生涯に四種類を制作したが、この作品のクオリティが明らかに最も低い
- ミロのヴィーナス:大理石像。
- 両腕が欠損。
【建築物】
- 軍艦島:海上炭鉱都市の遺構。
- かつては超過密だったが、炭鉱の閉山後は無人島となっている。
- サグラダ・ファミリア(聖家族贖罪教会/聖家族教会):スペインのカトリック教会。
- 費用調達と構造計算が難しいため最終形に至るまで約300年かかると言われていたが、拝観収入の増加とITの進歩により、2026年完成見込み(2024年時点)に繰り上げられた。
- 日光東照宮の陽明門:栃木県の神社の施設。
- 柱の1本のみを木の生長した向きとは反対に設置する『逆さ柱』とする事で、敢えて完成していない(逆説的に不滅である)としている。
- ノイシュヴァンシュタイン城:ドイツの城館。
- 全体構想の一部しか実現されていない(らしい)が、コンセプト図(現存)と見比べてもどこが不足しているか分かり難い
- チョンキンマンション(重慶大廈):香港の複合ビル(宿泊、飲食、両替など)。
- 1960年代に建てられた五棟のビルが一体化しており、猥雑な雰囲気が特徴となっており、小説や映画の舞台とされる事もある。
- 権利関係(所有権や営業権)が複雑を極め、協議による建て替えは不可能と言われている *諸説あり
- パルテノン神殿:ギリシャの遺跡。
- 壁面や彩色が欠落している。
- ピサの斜塔:イタリアの聖堂の鐘楼。
- 傾いている。
- フェンウェイ・パーク/Fenway Park:アメリカ大リーグの野球場。
- フィールドの形が左右非対称。
- 【フィールドの形】
- *ウィキペディア『フェンウェイ・パーク』の項目より
- フラムドール:東京都内の屋外オブジェ。
- 本来は垂直(縦)に設置されるはずだったものが、構造上の問題で水平(横)に変更された(らしい)。
- 【現物画像】
- 2025年1月撮影 / 東京都墨田区(撮影は台東区より)
- *アサヒグループホール棟の屋上に設置されているオブジェ。正式名称はフランス語の【フラムドール(金の炎)】だが、実際には【ウ○ンコビル】と言った方が通じる。
- *結果的には浅草観光の撮影スポットとして、非常に高い注目度と知名度を獲得している。
【文学】
- カラマーゾフの兄弟:ドストエフスキーの未完結小説。
- 続編が書かれるはずだった(らしい)。
- 銀河鉄道の夜:宮沢賢治の童話(?)。未完成。
- 作者の死後に見つかった『草稿』を基に出版されたもの
- 『草稿』自体も初稿~第四稿まで確認されているが、その第四稿も最終形とは考えにくい。
- グット・バイ:太宰治の小説。未完結。
- 金色夜叉(こんじきやしゃ):尾崎紅葉の小説(新聞連載)。未完結。
- 村上春樹の小説全般:謎が解明されなかったり、実生活ではありえない会話が延々と交わされたり、物語(らしきモノ)の伏線が回収されない。
- 明暗(めいあん):夏目漱石の小説(新聞連載)。未完結。
【科学書】
- 解体新書(初版):オランダ医学書(解剖学)の翻訳書。未完訳。
- 歴史の教科書にも記載されるほど有名だが、解説文の翻訳は困難を極めた。
- そのため、とりあえず図版を紹介する事を優先する事となり、文については『解読(推測)出来た(と思われる)部分だけを発表』する、『見切り出版(良く言えばパイロット板)』だった。
- *初版の出版までに4年、改訂版を出すまでには更に52年を要した。
- *結果的には、『見切り出版』でも当時(1774/江戸時代中期)の社会に大きなインパクトを与え、蘭学(特に医学)の進歩に大きく寄与した。
- *『解体新書』と言う用語は、現在(2024年)でも『特定の人物/集団に関する詳細な解説書』のタイトルとして、かなりの高頻度で使用されている。
【音楽】
- 未完成:シューベルトによる交響曲第7番の通称
- 未完成交響曲:その名の通り、未完成に終わった交響曲の総称(多数あり)
【玩具】
- ボブルヘッド人形:スポーツ選手の【頭部がユラユラする】人形。誰背番号や肩の名前を見ないと誰か分からないほど顔が本人に似ていない場合が(も)多い
- *2024年6月現在の状況
- *今後は似ていく可能性も高いが、単純にそっくりであれば良いと言うジャンルでもない気がする
【キャラクター/マスコット/ヒーローなど】
- 『左右非対称の主人公』はデザインワークとして難度が非常に高く(不気味になりがち)、生み出すのが非常に難しい。
- キカイダー01(きかいだーぜろわん):男児向けヒーロードラマの主人公。
- 後述する『人造人間キカイダー』に続く左右非対称ヒーローの第二弾。カラーリングは右半身が赤で左半身が青。
- *後付けの設定上は『01』の方が先に誕生した事になっている
- ざっくぅ:インターネット接続サービス『ZAQ/ザック』のマスコットキャラクター。
- 全身が白、顔は非対称の三文字(Z=右目、A=鼻、Q=左目)で構成される極めてシンプルなデザインだが、可愛らしいキャラクターに仕上がっている
- <顔のイメージ>(ZAQ)
- 人造人間キカイダー:漫画/男児向けヒーロードラマの主人公。
- 完成の一歩手前で開発者が拉致されてしまったため、左右非対称(左半身が未完成)になっており、カラーリングも右半身が青、左半身が赤。
- ブラックジャック:漫画/アニメ/実写映画/その他の主人公(無免許医)。
- :本名は、間 黒男(はざま くろお)。顔に(緊急対応の為)美観への考慮がない皮膚移植(ツギハギ)が行われている
- 目玉おやじ:漫画/アニメ『ゲゲゲの鬼太郎』の父親。
- 眼球と身体(二頭身)で構成されるが、もともとは人体サイズの五体を持っていた。
- (アニメでは)睡眠時に瞼(まぶた)が閉じる!
【まとめ】
- 当初の構想や設計とは違う形になることで、結果的に知名度や人気が上がるケースが多い
- 『どのようなマイナス点が何が特徴や魅力として受け入れられるか』は予測不可能であり、偶然の要素が多い
2025/7/11 改訂(9回目)
2024/6/15 初出
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