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潜伏期間30年の芸人

~ 漫談師 綾小路きみまろ氏について~

【始めに】
ファンとしての考察です。
あえて漫談家でなく"漫談師"と表記しています

 

 
漫談師、綾小路きみまろ。
 
一般的には毒舌の漫談師として知られており、著書も多数ある。
キャッチフレーズは"中高年のアイドル"
 
実際にネタのほとんどには毒が絶妙の加減で盛り込まれおり、客側は笑いと言う形で悩みや憂いをデトックス(排毒)すると言う構造になっているが、実はそのネタには老若男女や時代を問わない普遍性がある。
 
では、その普遍性はどこから来るのだろうか?
 
筆者が考察を重ねた結果、漫談(ライブ)やエッセイの内容は仏教で説かれている内容と共通点が多いことに気がついた。

つまり、ネタの根本はほとんどが"四苦八苦"や”人間の"業(ごう)"に関するもので、どうあがいていもそれらからは逃れられないのだから、(せめて)笑い飛ばしてしまおうと言う発想。

具体的には、お経や説教と言う”陰画(ネガ)”を漫談と言う”陽画(ポジ)”に反転させる芸人と言える。
*お経の本質や説教の原義はもともとネガ(ネガティブ)なものではないが・・・

それゆえ、下積み時代からネタの本質はずっと変わっていないのに、ブレイクまで時間が掛かった(「潜伏期間30年」と言うネタやキャッチフレーズになっている)のは、「若い僧侶に経典の内容を長々と講義されるのを喜ぶ人がまれ」であろうことを想像すると当然の結果と思われる。
 
実際、若い頃(30代まで)の写真などを見ると内面の鋭さが表情を支配していて、特に人や物を観察する目つきは周囲に緊張感を与えていたと想像させるが、50代に入ってネタの内容と外見や表情が噛み合うようになって来たと言うこと。
*実際にブレイクしたのは52歳だが、実は当時でも表情には鋭さが溢れていた
 
【結論】ちょっと長いかも(改訂の可能性あり)・・・

    • ネタの本質は仏教で説かれる”四苦八苦”と人間の"業(ごう)"
    • いつも同じネタを使い回しているように聞こえるが(失礼)、実は一度として同じではなく(まず会場の雰囲気を感じ、始まってからも観客の反応により組立が変わっていく)、もし結果的に一字一句まで同じ内容をしゃべったとしても間(呼吸)が違うらしい。
    • 雪の結晶、海や川の波、雲、炎 などのように、物理的には同じでありながら同じ形が表われないのと似ている気がする。
      • *筆者はきみまろ氏の漫談を寄席で2回聞いた経験あり
2020/10/03最終更新
2020/07/12初出