船舶、船、舟、艦。
自動車や航空機の発達に伴い、日常生活や経済活動において利用される分野や頻度は少なくなっているが、船舶およびその操船技術は、近世まで個人の人生から国家の盛衰までもを左右する最重要テクノロジーの一つであった。
その為、船(舟)、操船、海運、水運、海戦などに関係する用語や由来表現の一部は現代の日常会話に浸透しており、無意識のうちに使っている場合があるのでまとめてみたい。
除外:人名、団体名、地名、施設名
【ア行】
- 荒波(あらなみ)
- <用例>~を越える。~を乗り越える。~に漕ぎ出す。
- アンカー:錨/碇/イカリ
- <派生>アンカーマン(ニュース番組のメインキャスター)、リレーのアンカー、綱引きのアンカー、アンカーボルト
- 暗礁に乗り上げる(あんしょうにのりあげる)
- 按針祭(あんじんさい)*三浦 按針(みうら あんじん)に由来。
- <三浦按針について>
- 1564生誕の英国人。本名はウィリアム・アダムス(William Adams)で船員(航海士)として日本に漂着した後、徳川家康に重用された。
- 按針祭(複数の地で開催)、按針塚、按針町(消滅)、按針通りなどの形でも名を残している
- <姓名の構成>
- ・三浦=領地として与えられた三浦郡より
- ・按針=航海士/水先案内人
- イカリソース:調味料メーカーの社名および商品名。ロゴマークもズバリ錨。
- イカリソウ/錨草:草の名
- イカリムシ/錨虫:魚の寄生虫
- 宇宙船(うちゅうせん)
- *space ship(スペースシップ)からの翻訳か?
- 追い風 <用例>追い風が吹く。追い風を受ける。追い風に乗る
- 大船に乗る(おおぶねにのる)
- <末尾のバリエーション>~に乗った気になる。~に乗った気分でいる。~に乗ったと思って下さい。その他。
【カ行】
- 海賊版(かいぞくばん)
- カーゴパンツ:港湾で貨物(カーゴ)を取り扱う人の作業ズボンが原型
- カジキ/梶木:大型の海水魚。カジキマグロと呼ばれる事も多い。
- 舵取り(かじとり)
- 舵を切る(かじをきる)
- 逆風(ぎゃくふう) <用例>逆風が吹く。逆風を受ける。
- キャプテン(captain):船長のこと。原義は帽子(cap)を持つ(tain)人
- キャビン(cabin):船室のこと
- *山小屋が語源。
- 黒船(くろふね):16世紀ごろから日本に外航して来るようになったヨーロッパ艦船の総称だが、特に幕末前後に欧米から日本に開国圧力かけるための外交手段として機能した軍艦。
- 名称は船体の色に由来するが、欧米から日本にやって来る未知の脅威(特に製品や人物)を指す意味に派生している。
- 撃沈(げきちん):艦船が攻撃を受けて沈む事。『酒で酔い潰れる』、『異性に対して積極的にアプローチを掛けるがあっさり振られる』意味にも派生している。
- 航空機(こうくうき)
- *『航』の文字のつくり自体が『舟』
- 呉越同舟(ごえつどうしゅう)
- 漕ぎ出す(こぎだす)
- 漕ぎ着ける(こぎつける)
- 護送船団方式(ごそうせんだんほうしき):護衛付き商船団/輸送船団において、一遅い船の速度に合わせて航行する事。金融業界、特に銀行に対する保護政策の代名詞としても使われた。
- ゴンドラ:原義はイタリアのヴェネツィア特有の手漕ぎ舟。
- <派生例>観覧車や気球のカゴ、腰の高さまでしか囲いのないエレベーター、他
【サ行】
- 座礁(ざしょう)
- サブマリン:原義は潜水艦。
- <派生>野球のアンダースロー(投手)、縦に長い形のサンドイッチ
- 自転車を漕ぐ(じてんしゃをこぐ)
- 沈みかけの船/沈みかけた船
- <由来>like rats deserting a sinking ship(沈みかけの船を見捨てるネズミのように)より
- 順風満帆(じゅんぷうまんぱん)
- 人生の羅針盤(じんせいのらしんばん)
- 針路(しんろ)
- 世間の荒波に揉まれる(せけんのあらなみにもまれる)
- 船頭多くして船山に上る(せんどうおおくしてふねやまにのぼる)
- 前途洋々/前途洋洋(ぜんとようよう)
【タ行】
- 宝船(たからぶね)
- 助け船を出す(たすけぶねをだす)
- 灯台下暗し(とうだいもとくらし)
- デッキ:本来は乗り物の床、特に船の甲板の事を指す。
- <派生>デッキシューズ、デッキチェア、デッキブラシ、展望デッキ、他
- ド級/弩級(どきゅう):1900年代初頭における革新的戦艦の名称『ドレッドノート』に由来。
- 泥船渡河(でいせんとか/どろぶねにのりて河をわたる):仏典由来。順調に見える人生も実は極めて不安定である事の例え。
- 泥船(どろぶね):経営状態が悪化して崩壊の危機にある企業や組織の例え
【ナ行】
- 流れに棹さす(ながれにさおさす):水の流れに沿って舟を進ませる事。
- *『風潮に逆らう』と言う意味で用いるのは誤り
- 波がある
- 波に乗る
- 人間ドック(にんげんどっく):総合的な(通常より検査項目が多く費用も高い)健康診断
- *ドック(蘭: dok、英: dock)=造船所/船の点検・修理場
- 乗りかかった船
- 南船北馬(なんせんほくば)
【ハ行】
- パイロット(pilot):原義は、水先案内人またはその人が乗る船
- パーサー(parser、purser) : 原義は船内で財布(purse)を管理する人
- 八艘飛び(はっそうとび):壇ノ浦の合戦における源義経の舟から舟に飛び移りながらの戦いぶりを伝説的に表現したもので、相撲の戦法名に派生。
- 波瀾万丈(はらんばんじょう)
- 舟囲い(ふながこい):将棋の囲における守備陣形の一種
- 船出(ふなで) <用例>船出を祝う。船出を見送る。
- フナムシ/船虫/海蛆:節足類
- *海蛆の漢字は知らなかった
- 舟盛り(ふなもり):豪華な和食(主に海産物、特に刺身)を和船型の器に盛り付けた料理
- 舟を漕ぐ/船を漕ぐ(ふねをこぐ):座った状態で居眠りをして、頭が上下する様子
- フラッグシップ:艦隊の最高司令官が乗っている艦船
- <派生>フラッグシップショップ。フラッグシップストア。旗艦店。
- ブルーオーシャン:直訳は『青い大洋』。意訳は『碧き海原(あおきうなばら)』で『ビジネスや産業における大規模な未開拓分野』の意味に派生。
- ホタテガイ/帆立貝
- 帆を上げる
【マ行】
- 待てば海路の日和あり(まてばかいろのひよりあり)
- ミッドシップ(車):エンジンを車体の中央部に搭載するタイプの自動車で、英語のmid-shipは『船の真ん中』の意味。
【ヤ行】
- 湯船(ゆぶね)
【ラ行】
- ライナー:定期航路船。航空、鉄道、バス業界の名称や用語にも派生。
- 【用例】ボーイング787ドリームライナー、京成スカイライナー、空港ライナー
- *言語(英語)のlinerには『線を引く道具』、『野球の低く鋭い打球』、『服の裏地』等の意味もある。
- 羅針盤(らしんばん):方位磁針やコンパスと同意で、人生や組織運営の方向性を示す物や事の意味に派生。具体的には格言や書物である事が多いか。
【まとめ】
- 人生や組織運営の状況判断や決断に直結する内容が多い
2024/8/18 改訂(20回目)
2022/11/20 初出
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